最近見つけた面白いもの
インターネットで無限に時間が消える。
フォントに関するコラムが無料で読める。
おすすめは「絶対フォント感」の記事。(絶対フォント感=絶対音感的な感じで文字を見るだけで何のフォントかわかる感覚のこと)
初心者にもわかりやすく、フォントの見分け方を教えてくれます。普通の人にとって、絶対フォント感が日常生活で役に立つかは置いておいて。
特集:絶対フォント感を身につけましょう!|フォントコラム|FONTWORKS | フォントワークス
ゾイドの貴重な資料を集めている個人サイト。ずっと前から好きなんだけど、今年ゾイドが『ゾイドワイルド』で復活したじゃないですか。「10年後」どころか、サイト開設から15年経った今も、新商品のレビューを更新していて本当に格好いい。こういう完全に趣味だけでやってるサイト、好きだなぁ。
マーベル・シネマティック・ユニバースにおける年表 - Wikipedia
ウィキペディアにしておくのはもったいない充実ぶり。全部ネタバレなので『アベンジャーズ』など未見の人は見ちゃ駄目。映画はもちろん、TVシリーズまで網羅。読み応え抜群。
読ませるウィキペディアシリーズ。ビールの歴史や地域差から、製法、注ぎ方まで3万文字以上。
「小説家になろう」に突然投稿された告白文。果たしてフィクションなのかノンフィクションなのか。まさにインターネット的だ。
ほぼ日の企画。この記事自体はほぼ日らしくすごく誠実で、万能感はあまりない。「それにつけても金の欲しさよ」みたいなのを期待したんだけど。俳句万能フレーズって概念が好き。俳句の組み合わせなんて、奇をてらわなければ有限なので、AIがそれっぽい単語拾ってきて組み合わせて、その中から人間がいいの選ぶようになったらもっと手軽に作れるのになぁ。
[全巻無料漫画] 将太の寿司|スキマ|全巻無料漫画が30,000冊以上読み放題!
あんまり漫画読まないけど、たまたま検索したら出てきた。2018/11/13まで『将太の寿司』全27巻全部無料。1~2巻はパイロット版で、3巻から雑誌が変わって設定を一部変えて最初から始まる。今まで東京の寿司屋の話だったのが、何の説明もなく小樽の寿司屋の話になるからびっくりした。パイロット版の人情噺のほうが好きだったなぁ。特に1話は、寿司屋で働いて半年の主人公にどうやって寿司を握らせるのかって流れが美しい。『かぼちゃワイン』とか『プロレススーパースター列伝』とかもあります。
ノムさんの本は本当に使いまわしばかりなのか検証してみた | オモコロ
野村克也の本48冊でエピソードがどれくらい使い回されてるかの検証。こういうのって、野村さんが自分で書いてるわけじゃなくて、野村さんが話したことをライターが書き起こしているだけなんだろうけど、それにしても10回以上使いまわしてるのはいい根性だなぁ、見習いたい。
40代未婚、六畳一間でふたり暮らし。お笑いコンビ「阿佐ヶ谷姉妹」が語る新しい共生のカタチ
すっげえいい記事。
ジャパンカップ30年記念企画 ミニ四駆デザインコンテスト 結果発表 | タミヤ
ミニ四駆のデザインコンテスト。最優秀賞だけ製品化の予定だったけど、レベルが高すぎて5作品を製品化することに。これもう素人じゃないでしょ。
【公式】Dr.スランプ アラレちゃん 第1話 「アラレちゃん誕生 オーッス! お友だち」 - YouTube
1~5話まで。アラレちゃんかわいい。改めて見るとすごい世界観だ。アドベンチャー・タイムよりぶっ飛んでる。眼鏡かけたロボットって設定、めちゃくちゃ面白いな。
『鼠穴』ってあんまり好きじゃなかった。最後がアレじゃないですか。アレの噺がたくさんある中で、あえて『鼠穴』を選ぶ理由がないというか。
でも立川談志はテーマをアレじゃなくて「許し」と捉えているんだと僕は思う。だって序盤の兄のあの表情。心がザワザワして吐きそうになる。
「許し」がテーマだとすると、談志がよく言う「落語は業の肯定」、まさにそのものになる。落語の歴史に詳しくないけど、『鼠穴』って最初は「鼠穴は塞ぎましょう」っていう教訓話だったんじゃないかと思うんだよ。それが、噺家の解釈によって全然違う話になる。落語のおもしろいところだ。
『びじゅチューン!』全部配信してることに気づいたので、最近好きなのを。
テトラレンマ
生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ。
僕も10代の頃、よく思ってた。
昨日、鶴見済さんと櫨畑敦子さんのトークイベントに行きました。
鶴見済さんは言わずと知れた『完全自殺マニュアル』の作者です。
そのトークイベントの中で、まだ10代と思われる男の子からこんな質問があった。
「自分の子供や若者が『自殺したい』と言ったら、なんと言いますか?」
25年前に『完全自殺マニュアル』を書いた鶴見済さんと、非婚出産をして1歳の子供をかかえる櫨畑さんがどう答えたか、それはトークイベントに行った特権で秘密にする。これから東京と神戸でやるそうだし。
僕はこの前、山奥ニート最年少の子に似たようなことを聞かれたのを思い出していた。その時聞かれたのは「葉梨さんはなんで生きてるんですか?」だったと思う。
その時は「いま楽しいから」と答えたと思う。苦しい答えだ。
それは「楽しくなくなれば死ぬ」ってことだ。
実際、僕はそう思ってる部分がある。
苦しくなる前に、安楽死させてほしいと思ってる。50年も生きれば十分だ。
生前葬してもらって、パーティの最後に毒薬を飲むのが一番いいな。
9月9日に呼んでもらったニュースタートのトークイベントで『クローズアップ現代+』のVTRを観た。
そのVTRは「就職をゴールとしない。生きることがゴールでいいんじゃないか」という流れで締めくくられていた。そしてそれに対して、ニュースタートのスタッフの方は「生きることをゴールにするのはどうかと思う。それで手遅れになった人を何人も見てきた」と言った。
その後に僕にふられて、僕は何と言ったらいいかわからなかった。ひきこもり支援をしているスタッフの方の言葉は、経験に基づく重さがあったからだ。
山奥ニートの本を書くために、南方熊楠について少し調べている。
和歌山でニートをしているなら、避けては通れない巨人だ。
彼に関する本を読んでいたら「レンマ」という言葉が出てきた。
意味がわからず、調べても意味がわからない。
Wikipediaにはこう書かれている。
レンマ(英語: lemma)とは、哲学用語のひとつで、「律」、「句」の意味。ギリシア語ではλῆμμα。「とる」、「受け取る」という直観的な把握の意味のギリシア語λαμβαυωから出来上がっている名詞で、本来的には、チャトゥシュ・コーティカ(サンスクリット語: catuskoti)のギリシア語訳でテトラ・レンマτετραλῆμμαという名前の思考スタイルが、これを4つ使って構成される。
なんのこっちゃ。ツイッターで助けを求めたら友達が教えてくれた。
「ジレンマ」という言葉がある。「ジ」とはギリシア語で「2」のこと。
2つのことに板挟みになって決められない状態を言う。
それと比較して「テトラレンマ」という言葉がある。普通「レンマ」というとこっちを指すらしい。肯定か否定かの2択である「ジレンマ」に対して、こっちは肯定、否定、肯定でも否定でもない、肯定でも否定でもあるの4択らしい。
要するに。
- 生きる
- 死ぬ
これが「ジ(2)・レンマ」。
- 生きる
- 死ぬ
- 生きないし死なない
- 生きつつ死ぬ
これが「テトラ(4)・レンマ」ということらしい。
ギリシア哲学はジレンマだけど、インド哲学はテトラレンマで、南方熊楠はテトラレンマ的に物事を考えていたようだ。
頭で考えていると、ついつい極論に走ってしまう。
肯定か否定か、2つのうちどちらかを選ばなきゃ駄目だと思ってしまうけど、実際の事象ではそのどちらでもない選択肢が現れる。
生きるか死ぬかも、そのどっちでもない状態がある。というか、胸を張って生きてると言える人ってあんまりいない気がする。少なくとも、労働を嫌々やっているなら生きている時間のうち三分の一は生きてると言いづらい。
生きるか死ぬか、そんな2択になった時点で間違えている。
「生きないし死なない」人生も、「生きつつ死ぬ」人生もある。
そう思ったら、なんだかモヤモヤがスッと消えたような気がした。
まぁ質問をした10代の子がこれで納得してくれるかはわかんないけど。
山奥に帰らず、妻の家から図書館通いの毎日です。
山奥ニートの本を1月に出すためには11月までに書きあげなきゃいけないらしい。
山奥は誘惑が多いんですよ。楽しすぎるから。
戻らなきゃ書けないこともあるけど、図書館でないと書けないこともあるので、それが終わってから山奥戻ることにします。
山奥ニートが18人になってわかったこと
取材には、いつもだいたい15人くらいで住んでいると答えてるんだけど、指折り数えてみたら今日現在18人いた。
2018年になってから、5人が新しい住人になった。たった8ヶ月でだ。
最初は2人で始まった山奥ニートが、こんなに早いスピードで増えるなんてびっくりだ。
せっかくだし、最近感じたことをまとめて書いておきます。
1.グループができる
10人前後のときは、分け隔てなく交友があったように見えたけど、18人になるとよく話す人とそうでない人が出てくるみたいだ。
グループができたきっかけは、共生舎に女性が来たことなのかもしれない。今女性は3人住んでいるんだけど、やっぱり女性は女性同士で仲がいい。異性間で同性間のように親しくするのはどうしたって無理がある。そこから派生して、少しグループのようなものができつつある。
とはいえ、共生舎に住み始めた女性たちも少しずつ男性住人との会話に慣れてきたみたいだ。あまり見たことのない組み合わせでお喋りしているのを見ると、僕はなんだか嬉しくなる。
2.お客さん疲れ
山奥ニートが18人と書いたけど、そのうちの3~4人は短期滞在の「お客さん」だ。お客さんは3日~2週間くらいの滞在が多い。便宜上お客さんと呼んでいるけど、NPO共生舎は宿泊所じゃない。お金は最低限の光熱費と食費しかもらっておらず、それによる儲けはない。
お客さんに対応したからって、住人が得することはほとんどない。それでも、お客さんのために前もって布団を干しておいてあげる優しい住人もいる。また、お客さんが来ても、ほぼ無視する住人もいる。今までは持ってきてくれたお土産を対応した人が優先的にもらえる、ということでバランスが取れるんじゃないかと思っていたけど、人数が増えたことでお土産一人分の取り分が少なくなって、お客さん対応の旨味が釣り合わない。
僕が留守にしていた6~7月に、共生舎のことをよくわかっていない人が来て「飯が用意されてないじゃないか」と文句を言ったことがあるそうだ。その方には丁重にお引取り願ったと聞いている。夏休みシーズンでお客さんが多いということもあって、最近の住人は少しお客さんの対応に疲れている。
そういうわけで、とりあえず8月の間は遊びに来るのを控えてもらえると助かります。
3.バンドができた
18人もいると、いろいろできることが増える。いつの間にかバンドができたみたいだ。ギター、ギター、ベース、ドラム(アプリを使ってスピーカーから音を出している)、ボンゴとよくわからない編成だ。僕もメンバーに入りたかったけど、すでにギターが2人もいるからもうギターは要らないと言われてしまった。代わりに最近もらったハーモニカでも練習しようかなぁ。
近いうちにライブをしてくれるようだ。できれば、村の祭りで演奏してほしいな。元気な若者の姿を見せるだけで、村の爺さん婆さんはきっと喜んでくれると思うから。それくらいしかこんな訳わからん若者を受け入れてもらえた事の恩返しができない。
4.ゴミ箱が常にいっぱい
人数が多いから、ゴミ箱を空にしてもまたすぐいっぱいになってしまう。ゴミ箱が満タンでも、自分が捨てるこのゴミくらいは入るだろう、と思うのか溢れ出ている時がある。少ない人数のときは、全体の利益になる行動をすると自分が評価されて株があがったけど、20人近くになると誰かがいいことをしてもそれに気づかない事態が出てきてしまう。そうするとゴミをまとめたり、掃除をすることへのインセンティブが少なくなって、やる人が減ってしまうようだ。
晩ごはんについては「その時やりたい気分の人がやる」という仕組みのままで、毎日ご飯が作られているけど、ひとりで18人分の食材を切ったり混ぜたりするのは負担が大きすぎる気もする。
5.ボードゲームがより盛んになった
共生舎にはボードゲームが好きな人が多い。初対面でも話題に困らないし、下手な会話をするよりよっぽどその人の考え方がわかる。
だけど、ボードゲームは基本的にひとりじゃできない。人数がいても、苦手な人や気分じゃない人がいたりして、4人以上で行うボードゲームはなかなか成立しなかった。でも最近はリビングの隅と隅で別のボードゲームをやっているくらい盛んだ。
最近人気なのはカタンかな。何度プレイしても底が見えない。卓が立ちやすいから、繰り返し遊べるものが流行ってるみたいだ。
6.畑をやる人は相変わらず少ない
4月に住み始めた新人の子が独りで畑をやっているけど、大きな規模で農業をやろうという感じではない。NPO共生舎の活動内容に「休耕地の有効利用」って項目があるんだけど、あまり今まで出来ていないから、できれば畑を活かそうという人が住んで欲しいなーと思う。「お金があまりかからず住める」というのはそれだけで十分な利点なんだけど、どうせなら他の利点も使ってくれると嬉しいな。でも僕自身あまり畑仕事に精を出すタイプではないので、強くは言えない。
個人的に、初夏ごろプランターにナスとトマトとキュウリを植えた。どうせならいっぱい栄養入れたれ、と思って肥料やりまくったらキュウリは枯れてしまった。1ヶ月くらい山を降りている間に、トマトはどこかに消えていた。ナスは放置していたのにちゃんと実が成った。えらい。品種改良はすごいなぁ。
畑をやる気が起きない原因は、共生舎の畑まで、徒歩30分、車で5分と少し距離があることだろう。共生舎の周りには使われていない空き地がたくさんあるので、それらを貸してもらって畑にできたら、やりたいという人が増えるかもしれない。とりあえず今は土地主が草刈りなどに来たときに、散歩のフリして近づいていって「暑いですね―」とか話しかけることで怪しい集団ではないアピールをしている。
7.リビングに座る場所がない
ご飯できたよーと言われてリビングに行って、自分のをよそってさぁ食べようと思ったのに、座る場所がなくてあたりをうろうろ。数えてみたら、リビングだけで16人いた。ひとつの空間に16人の人間がいるのは凄いことだ。どの方向を見ても人がいる。ここは限界集落だろう。
人が集まる原因はクーラーだ。山奥とはいえ日中はやっぱり暑いので、リビングに人が集まっている時はクーラーをつけている。冷風を求めて、山奥ニートが集まってくる。それでもあれだけの人口密度なのに自分の部屋に戻らないのは、やっぱり居心地がいいんだろう。それは嬉しいことだけど、やっぱりむさ苦しい。
洗濯機やお風呂、食器洗いも順番を待たなければいけない。まぁこれはしょうがないね。洗濯機もう一台買うお金はないし。
8.それでもやっぱり働かない
夏の間は、近くのキャンプ場から仕事をもらっている。山奥ニート内でローテーションして、かわりばんこに行く。内容は主にロッジの掃除だ。職場のおばちゃんはとってもいい人だし、仕事もそんなに辛くない(暑いこと以外は)。時給もまぁ普通だ。
それなのに、行きたいという人が少ない。前日まで誰が行くか決まらないことがよくある。みんな働きたくないらしい。お金に困ってる人が少ないということだから、悪いことじゃない。全員お金なくて仕事の奪いあいになるよりはよっぽどマシだ。
だけど、こんなに人いるのに、仕事が余るのかーとちょっと驚きだ。来年は断ろうか、なんて話も出ている。山奥でできる仕事は貴重なのでもったいないと思うけど、じゃあ僕が毎日出るかと言われると、他にやりたい事がたくさんあるし、という感じでうーん。
川で本読んでたらニートが流れてきた
山奥とはいえ、日中は暑い。
特に僕の部屋は日当たりがよく、窓が大きいから温室そのものだ。
パソコン触ってるだけで、キーボードに接する手首が汗でべったり張り付いてしまう。
こんなところには居られない。川へ行こう。
共生舎から150mほどの距離にある川。
ちらと目をやるだけで、10匹近くの魚が泳いでいるのが見える。
サンダルを脱いで、足を水に浸す。
冷たくて気持ちいい。
岩にタオルを敷く。こうしないと、ゴツゴツした岩に僕のやわらかいおしりは負けてだんだん痛くなってしまう。
持ってきた本を開く。360度からセミの鳴き声が聞こえる。都会とは違う種類のセミだ。なんという名前だろう。
森からふわっと冷たい風が吹いてくる。
なんて贅沢だろう。
お金はないけど、今の僕は日本で一番豊かなんじゃないかと思う。
何ページか読んだ後、水に漬けた足がかすかにくすぐったく感じた。
なんだろうと思って見れば、5cmほどの小さな魚が僕の足をつついていた。ドクターフィッシュと呼ばれてるあの魚以外も食べに来るんだと驚く。
後ろのほうで足音がした。振り返ると、ジョー君がひとりで浮き輪をもって川に向かって降りてきた。
本を読んでいる僕に気を使ってくれたのか、何も言わずに河原を上流へ歩いていった。
しばらくすると、ゆっくりとジョー君が流れてきた。
なんという絵になる男。
美しい絵画のようだ。
そのまま何も言わずに見送った。
さようなら、また共生舎で会おう。
本を読み終わって立ち上がったときには、セミの声はひぐらしに変わっていた。
陽は少し傾いて、木漏れ日はオレンジ色を帯びている。
日記 (2018/07/25)
昨日は鹿が捕れた。夜、捌いた人で一番美味しいロース部分をBBQしているところに通りがかったので、入れてもらった。次のパーティーの余興に大喜利をやってはどうかという話になって、急遽プレ大喜利大会が始まった。蚊にたくさん刺された。それで笑い疲れて1時過ぎに寝たから、今日は朝8時に目が覚めた。
朝方の山奥は涼しい。空にも雲がかかっていて、扇風機なしでも過ごせた。本の作業を少しやる。編集者さんに見せた部分が気になって、前に進まない。問題は分割せよ、と思って細切れにしたけど、上手くいった気がしない。問題の捉え方自体は間違っているのかもしれない。
集中できないので他のことをする。ここ一ヶ月強の街暮らしの間に伸びた髪を、バリカンで剃る。共生舎から少し離れた草むらでひとりで剃る。明日取材があるので、そこそこ長い9mmにする。襟足やもみあげの柔らかい髪はどうも上手く剃れない。仕上げにハサミで切ったが、頭の後ろはどうしたって見えないので適当だ。
昼ごろリビングへ。部屋の隅では何人かで「ワードバスケット」をやっていた。「男はつらいよ 寅次郎の縁談」をお客のTさんが見ていた。Tさんは舞台である香川県に行ったことがあるそうで、気になっていたという。男はつらいよ自体は初めてだそうだ。「寅次郎の縁談」は山奥ニートと通じるところがあるから特別な思いがある。それだけに終わり方がもやもやする作品なので、見終わったら感想を教えてと言う。2時間後の感想は「よくわからなかった」だった。そうか、そうか…。
ワードバスケットに参加する。初めての人がいたので五文字以上縛りにする。しばらくやっていなかったからか、手札の文字が半端に頭をよぎってしまう。ワードバスケット脳を取り戻せない。何度かやるうちに初めての人が慣れてきたので、四文字以上縛りにしたらスッと上がれた。単純に手札が強かったのが大きいけど。
あまり遊んでいては本が進まないので、昼飯にする。
炊飯器を開くと、ひとりぶんだけご飯があった。冷蔵庫を見ると、使いかけのトマト缶があったので、ウィンナーを炒めてトマト缶を煮詰めて、その中にご飯とチーズを入れたものを作って食べた。美味しかった。この前ルーを使わないカレーを作った時、トマト缶を使った味付けはしょっぱめにするものだと学んだからだ。
食べ終わった時に、電話がかかってきた。短期滞在の希望だ。以前電話をしていたそうで、日取りが決まったとの連絡だった。なんとなく不安そうな声だったので、少し話をする。余計なお世話だったかな。
電話を終えると、ちょうどヤマトが荷物を持ってきた。大きなダンボールだ。開けると服がたくさん入っていた。一昨日「うちの住人があまりにボロボロのTシャツを着ているから、余ってるTシャツがあったらください」とツイートしたからだ。ほぼ新品で、お洒落な服ばかりだ。たくさん送ってくれたので、僕もアロハシャツをもらった。自分で買おうかと思っていたから嬉しい。お金がないから助かるのもそうだけど、何より自分の持ち物にエピソードができたことが嬉しい。送ってくれた人にツイッターでお礼を言ったら、アロハシャツはばなしさんに似合うと思ってました、とのこと。そこまで読まれていたなら、なおさら愛着が湧く。ちょうど明日からテレビの人が来るので、これを来て取材を受けよう。
写真を取っているうちに、今度はゆうパックで別の方から服が届く。こちらは袋から出してもいない新品だった。デザインが可愛くて、ボロT着てた山奥ニートの好みに合ったみたいだ。
続いて、佐川急便がまた大きなダンボールを持ってきてくれた。中身はうまい棒。相当な数だ。いろんな種類が入っている。ありがとうございます。山奥ニートは嗜好品に飢えているから、きっと一瞬で無くなるだろう。
その後、本のために自分の部屋に戻ったんだけど、その間にまた別の荷物が届いたようだ。なんと「ディクシット」の拡張だった。5000円近くする上に、なかなか売ってないものだ。どういうこっちゃ。ただただ恐縮です。
それにしても、こんな山奥まで荷物を届けてくれる宅配便の人には頭が下がる。別々の会社だろうけど、今日だけで4回も運んできてくれているのだ。うーん。
リビングでは冷房がかかっていて、G君がギターの練習をしていた。カポが届いたから試しているけど、どうもしっくりこないらしい。
部屋に戻って書こうとする。進まない。そのうちに、妻からマイナンバーを調べろと言われていたことを思い出す。全然それ関係の書類を受け取った覚えがない。山積みになっていた書類を全部ひっくり返したが、マイナンバーの通知書は見つからなかった。やっぱり受け取っていないようだ。通知書の再交付のためには役所で申請をしなきゃならないようだ。ひぃー。書類の整理をしているうちに、本についていい案が思い浮かんだ。その方向で考えてみよう。
大粒の夕立が一瞬だけ降って、すぐにやんだ。
トイレついでにリビングに戻ると、買い物班が戻ってきていたので食材を冷蔵庫に入れる。頼んでいたウィスキーを買ってきてもらった。
ピエールがカレーを作り始めた。しまった、昼に炊飯器を空にしたのに洗うの忘れてた。誰かが代わりに洗ってくれたようで、炊きたてのご飯が二十合入っていた。罪滅ぼしにゴミ箱のゴミをまとめて、新しいゴミ袋に取り替える。ちょうど書類を整理して山のように紙ゴミが出たし。
タブレットをリビングに持ってくるのを忘れたので、一旦部屋に戻る。
夕立のせいか、だいぶ涼しくなった。ひぐらしの声と扇風機の回る音しか聞こえない静かな夕方だ。
そろそろピエール作のカレーが出来上がる頃だろう。隠し味として創味シャンタンを入れたらしい。美味しいといいな。
日記 (2018/07/19)
名古屋の妻の家。
朝、寝ぼけながら仕事に行く妻を見送る。妻に言わせれば、寝起きの僕は「話が通じない」らしい。自分ではよくわからない。というのも、何を話したかまったく覚えていないからだ。だから妻は日中に僕にさせたい事をメモしてから家を出る。
9時ごろ、二度寝から目が覚めた。何か嫌な夢を見ていた気がするけど、どんな内容かは思い出せなかった。のっそり布団から起き上がって、パソコンを開く。特に面白いものを見つけられず、妻が残したメモを見る。便器を掃除して、使った柄付きタワシを干しておくこと。気分じゃないから今日はやらないと妻にメールする。黙って放置しておくと後が怖い。普段は朝ごはんを食べないけど、なぜかお腹がすいていたから納豆卵かけご飯を食べる。昨日の残りのイカとキャベツをにんにくで炒めたものも一緒に。BGM代わりにDetroit: Become Humanの実況を見る。その後、はてブやRSSをチェック。
ぐだぐだネット見ててもしょうがないので、図書館へ行く。街に下りてる間に図書館に行っておかないと損だ。喉が乾くだろうから、空きペットボトルに水道水を入れて持っていく。ニートに自販機でジュースを買う余裕はない。今日もよく晴れている。しかし午前中だからか、そこまで暑くなかった。暑いのは嫌いじゃない。だらけているのが自分だけじゃなくなるからだ。自転車に乗って走っていると、飴を忘れたことに気づく。どうにも文章を書くとお腹がすくから必要なのに。まぁこんなこともあろうかとバッグの中にはカロリーメイトが入っている。死ぬまでに腹が減る回数は限られているのに、カロリーメイトなんかでお腹を膨れさせるのはもったいない気もするが、たまにはいいや。なんとなく仕事してる気になるし。
7月も半分を過ぎているが、幸いなことに図書館に学生はまだ見当たらなかった。じきに夏休みになって、学生が多くなるだろう。いつもの電源付きの席を確保して、パソコンを開く。僕が本当に集中できるのは一日に2時間くらいだ。これは長いニート生活の悪い面だ。会社員だったらもっと長く集中が続くに違いない。ニートで会社員くらいの行動値があれば、どんなにいいことか。ナチュラルボーンニートの僕は、ニートらしく1日が1ターンの世界で生きている。
さて、書かなきゃいけない。今取り掛かっているのは自分が山奥ニートになるまでの話だ。これがなかなか難敵だ。自分が大学を辞めたことやバイトで失敗したことを書かなきゃならない。嫌な思い出がフラッシュバックそうになって、脳がストッパーをかける。鬱は記憶力が低下するとよく言われるが、インプットしたのを忘れてしまうというより、インプット自体していないように思える。あの時の僕は何も見ていなかったんじゃないだろうか。今朝見た夢のほうがまだ思い出せそうだ。
先週の終わりに編集者さんに提出した下書きの、反応のメールが返ってきている。しばらく怖くて開けなかったが、図書館なら衆目があるから少し落ち着いて読めるだろう。恐る恐る内容を見ると、とても気を使って書いてくれていて、ほっと一安心。直すのは一通り書いてからでいいと言われた。僕は文章の基本がなってないから、何度も何度も直さないと読める文章にならない。ブログですらそうだから、ほとんど直していない提出した文章がクリアラインに達しているはずがない。でもひとつの所にこだわっていても進まないので、編集者さんの言う通りにする。
足りないと言われたところを、当時のことを思い出しながら書く。詰まったら図書館をぐるぐると何周も徘徊する。宮藤官九郎のエッセイを読む。村上春樹の紀行文を読む。西村賢太の日記を読む。
ペットボトルに入れた水道水を飲みながら、カロリーメイトを食べる。仕事してるっぽいのかこれ。よくわからない。仕事ってなんだ。ニートにはわからん。隣ではおじさん2人がでかい声で競馬の話をしていた。
パソコンの前に戻って、続きを書こうとする。高校生の頃、インターネットに出会った話。あの頃の「インターネット」ってなんだったんだろう。今の「インターネット」ってTwitterとYouTubeじゃん。ここにInstagramやAmazonが入ってくるくらいだろうか。僕が高校生だった2005年はどんなサイト見てたっけ。友達とskype、テキストチャットでTRPG、自分のブログはやっていた、後はなん実Vくらいか。具体例を上げると今とあまり変わってない気もする。ただ、何かを検索した時に、今はアフィサイトや企業サイトばかりが上位に来るけど、当時は個人のサイトが主だった。そういうサイトは一円も貰えないのに、個人の情熱だけで作られていた。資本主義ではない、何かだった。そういう所が好きだったのかな。でもその見方は、そういうサイトを作っている人が普段ちゃんと働いている事を見ないようにしている。仕事があるから趣味ができるんだ。
一方で、趣味を仕事にするのも、なんだか複雑な気持ちになる。ヨッピーさんやARuFaさんの記事は今でも楽しませてくれるけど、結局会社員だもんな、とも思ってしまう。好きなことで食べていけるのは、きっといいことなんだ。だけど、食べるために好きなことをするのは何か寂しい気がする。
こういう事に折り合いがついていないから、僕は今もニートだ。書籍化も遅々として進まない。清貧は必ずしも美しくないぞ、と頭では知ってるんだけど。
同窓会と山奥ニート
高校の同窓会に行ってきた。
山を下りて、わざわざ。
同じクラスの人は誰ひとり思い出せない。
昼はいつもひとりで食べていた。
十七歳の僕はクラスの誰にも心を許していなかった。
今考えると、クラスの人を見下していたんだろうな。
それなのに同窓会に行こうと思ったのは、思春期の鬱屈した思いを今思い出しておかないと一生忘れてしまう気がしたからだ。
ライ麦畑でつかまえて、グミ・チョコレート・パイン、タクシードライバー、銀杏BOYZ、僕の小規模な失敗、ボーイズ・オン・ザ・ラン。
当時は死にたくて破滅に憧れていた僕も、今年三十歳を迎える。
それでもUFOが来たら、迷わず乗ると決めている。
タイムマシンだってそうだ。同窓会はタイムマシンに最も近いもので、それが会費8000円で乗れるんなら安いものだ。
高校時代を懐かしむために行くんじゃない。高校時代の暗く、苦い思い出をもう一度。
間違いなく僕の原点はそこにある。
会場はあまり広くないホールで、立食形式だった。
BGMとしてBUMP OF CHICKENが流れていた。
だからバンプは嫌いなんだ。
周りにいる同級生の顔を見ていく。かすかに記憶にあるのが何人か。
しかし名前は全然わからなかった。
みんなは十三年ぶりの再会に盛り上がっている。
僕がひとりでいるのを見て、男の子が話しかけてきた。
覚えている人はいる? 覚えてる先生は?
どちらもいない。話題がない。
結局、天気がよくてよかったという話をして離れていった。
彼は覚えてる。クラスメイトだ。高校の頃もまったく同じ事があった。
その時も、こんな感じで話が続かなかった。
悪い事をしたな、と思った。
だけど無理して話題を作るのもおかしい気がした。
周りの会話に耳を澄ませながら、料理を腹に詰め込む。
酒もどんどん飲む。
おかげで、少し人と話したくなってきた。
いつもシラフで、高校生は大変だな。
僕をこの同窓会に誘ってくれた子の近くに行く。その子は、女の子と話していた。その女の子もどこかで見た覚えがあった。
ああ、そうだ。高校生の頃、少し気になってた女の子だ。
僕は文芸部の部長をしていて、その子もなにか文化部の部長だったから、部長会議で顔を見かけるのだ。
だけど結局、一度も話しかけることはなかった。
一度だけ、図書館で向かいの席に座ったことがある。でも話しかけるきっかけがなく、それだけだった。
その子は日本酒を飲んでいた。
「いいなー」と言うと、その子は自分が飲んでいたおちょこを僕に渡した。
間接キッスと驚く間もなく、その子は日本酒の瓶に口をつけてラッパ飲みし始めた。
ああ、こういう変わった所が好きだったんだなぁ。
そのあとは普通に楽しく喋った。
こんなに楽しく喋れるなら、あの図書室で無理矢理にでも話しかければよかったかな、と一瞬思って、すぐそれを否定する。
無理に話しかけても、会話は続かないよね。
今こんなに話せているのはお酒の力だ。
三十歳の僕が記憶を保ったまま、十七歳に戻っても同じ結果になるだろう。
そう考えると、ちょっと運命とか呼ばれるものはあるかもしれないと思った。
その後二次会まで行ったけど、お金がなくなったから三次会はやめた。
合計1万1000円。その価値はあっただろうか。
妻の待つ家に帰る。
帰ったら妻は日本酒でべろべろになっていた。
ずるい、と僕が言うと、妻はおちょこを僕に押し付けると、自分は大きなコップに波々と注いで飲み始めた。