ぼくもだっちくんに何かあるごとに「これ漫画のネタにしちゃえよ」ってよく言う。
別に漫画に限らず、たとえば三国氏は保険関係のニュースがあるたびに意見を求められて、それが相手の意向に沿わなけりゃ「保険屋失格じゃん」なんて言われるんだろう。
何かのプロになるというのは、そういう期待をされるってことだ。
だけどもちろん映画監督だって漫画家だって保険屋だって人間で、倫理観がある。
ピューリッツァー賞の「少年とハゲワシ」のあの写真だって、批判はあったみたいだけど、撮る方も相当きつかったんじゃないかと思う。
「おっ、死にそうな子どもがいる。ラッキー」なんて思えたらどんなに楽か。
この『監督失格』というタイトルはもちろん由美香さんが喧嘩の様子を撮らなかった平野監督に対して言った言葉だけど、あの一言は本当に何気なくて、喧嘩した腹いせに毒づいた一言でしかないと思う。
だけど平野監督にとってはそのあと16年間縛られる一言だったんだ。
そんな一方通行だったから平野監督はずっと片思いだったんだろうな。
まとまらねー!!!
これだけでいいや。
この映画を観終わったあと、ぼくの頭の中ではずっとエンディングテーマの「幸せなバカタレ」が流れていて、映画館の帰り道ひとりで歩いていたら急にぶわっと涙が溢れてきた。
映画を見ている最中は「あー、由美香さん的な部分はどんな女の子にもあるなー」とか「旅の浪漫は所詮女にゃわからねえんだな」とか思っていたけど、映画終わったあとは何も考えられなかった。
ぼくは「16年の苦しい日々があったからこそ、こんな映画が撮れたんだ良かったじゃない」なんて言えない。
どうもそういう「苦しいことがあったから今があるんだ」的な考え方は好きになれない。
いつも「何かに夢中になれるっていいなぁ」なんてのんきに思ってるけど、これ観たあとはそう思えなかった。