山奥ニートの日記

ニートを集めて山奥に住んでます。

映画感想『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』

別に映画ブログにしたいわけじゃないんです。ただ、ブログをしばらく更新しなかった後は、いくつかリハビリ記事を書くことにしてるだけです。

『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』

 楽しめた度:60%

ニコ生でおすすめされた映画、「承認欲求についての話ならバードマンが良かったよ」。

2014年のアカデミー賞最多受賞作だったかな。

でも、見た直後の感想は「よくわからない」だった。

以下ネタバレ

 

この映画のタイトルは『バードマン』と『無知がもたらす予期せぬ奇跡』の2種類あって、見た人がどっちか好きに決めたらいいよってことなんだろうな。

『バードマン』の場合は、主人公は舞台上で自殺をして死ぬ。病院のシーンは主人公の死後の世界や走馬灯だ。あのシーンを真実だとするとおかしな点がいくつも出てくる。

・老婆の批評家は劇が終わるといち早く席を立って出ていっている。「すごいものを見た! 早く批評をかかなきゃ!」というのもなくはないけど、そんな感じはしなかった。怒っているような所作だ。

・病院のテレビはよく見ると回復を祈っているというより、死者を追悼しているようだ。

・そもそも最後鳥になっちゃってるからね

他にもいろいろありそうだ。だからあのシーンは現実じゃない。

主人公は元・バードマンとして生涯を終えた。それに対して主人公はどう思うだろうか。ニコ生で勧めてくれた人は主人公は承認欲求から解放されて良かったと言っていたけど、ぼくにはどうもそうは思えない。望まぬ結末だと思う。だって自殺する時、すげー躊躇ってたじゃん。とても何かを悟っているようには見えなかった。まぁファンがたくさんいたということがわかったから、それでいいのかもしれない。

 

無知がもたらす予期せぬ奇跡』がタイトルの場合。こっちは映画で描かれた通りだ。深読みしない。主人公は自殺を図るも、運良く助かった。そしてそれが予期せぬ人気を得た。病室で見せられる新聞にはこのタイトル通りの見出しが載っている。

たださー、この場合もそれでハッピーエンドなのかなって思うんだよね。主人公はネットで人気になることを邪道だと言って見下していたわけでしょ。なりふり構わず人気を取り戻したいと思っていたならこれでいいんだろうけど、本来の実力とは違う部分で人気者になったらバードマンだった頃と同じなんじゃないの。…まぁそれでいいってことかもしれない。劇本番の直前に主人公が妄想の中でバードマンになるのは、もう一度バードマンになりたいと腹をくくったということなのかもしれない。

 

どっちのタイトルにしても、一概にハッピーエンドとは言えなくてもやもやする。これは「よくわからない」というのが答えなんじゃないかな。この映画、客観的な事実がすごく少ない。主人公の劇は面白いのかつまらないのか。そこがわからないとラストで主人公が評価されたのが実力によるものだったのか、奇跡だったのかわからないじゃん。でもそれすらわからない。だって主人公にはわからないから。自分が才能があって価値ある人間なのか、それともいなくてもいい人間なのか。答えはない。この映画ではっきり事実だと言えることってひとつしかないと思うんだ

それは拳銃で自分を撃ったということ。

きっとこれだけは事実だ。自分に才能があるのか誰にもわからない。そんな中で出来ることは自分(プライド)を吹き飛ばして、行動を起こすことだけだ。たとえ劇がつまんなくても、自分で監督脚本主演やってブロードウェイで公演するってすごいことじゃんか。主人公はいろんな問題を抱えていて、それを解決できなかったけど、行動を起こしたってだけで十分すごいよ。一発屋になれるだけでもすごいしね。

ノーカット風の映像は気持ちよかったし、登場人物と役者を重ねたメタ的視点も面白いと思う。でも僕の好みとしてはあんま技巧的なのはなー。楽しめた度60%くらいだったなー。『アイアンマン』のほうが好きなんですよ。あとチャップリンの『ライムライト』好きだから、そういうのが見たくなっちゃった。