山奥ニートの日記

ニートを集めて山奥に住んでます。

山奥ニート、マジギレする

今日、産まれて初めて「マジギレ」してしまった。

僕に会った事がある人は、僕が怒るような性格じゃないことはよくわかると思う。

実際、腹を立てることなんて一年に一度くらいしかない上、それを相手に伝えることはほとんどない。すぐに忘れる。

僕も自分自身を怒らない人だと思っていた。怒ってる人を見ると、なんでそんなに真剣に怒れるんだろうと不思議に思っていた。

ところが今日、僕は人を怒鳴りつけ、物を当たらずにいられなかったんだ。

 

昨日の夜からなんとなく虫の居所が悪かった。理由はこれと言ってないんだけど、なんとなくカリカリしていて、Twitterで少し棘がある事を言ったり、住人のブログのおかしな所を突っ込んだりしていた。イライラの理由を強いて挙げれば、テレビの取材が思ったより急だったことくらいかな。でも別に不都合があるわけじゃないし、何の連絡もなく話が消えるよりマシだ。

今朝起きた時も機嫌が悪かった。いつも寝起きでボケている事はあれど、不機嫌になることなんてないのに。朝からテレビの取材で、愛想なく「おはようございます」と言った。キャンプ場のアルバイトの日だった。

今日の予定は、午前中にキャンプ場アルバイト、午後に地域のお祭り、夜に隣のお爺さんと一緒に借りてきた映画を見るつもりだ。テレビの取材の人にもそう伝えていた。

僕はあんまりキャンプ場に行ってなかったんだけど、今日は軽トラを運転する仕事があるから「どうしても」と言われて行くことにした。お祭りは午後からなので、午前中は仕事しても十分間に合う。僕は他の住人と「お祭り楽しみだね」という話題を何度かしていた。アルバイトが午前中で終わることはホワイトボードに書いてあったし、僕が今日行くことになった時もお祭りに行ける事を確認した。

バイト先へ出発する時に、お隣のお爺さんに会った。お祭りにお店を出すので、14時に車で送って欲しいと言われた。もちろんOK、今日は午前中で終わりだから一緒にお祭り行けますと答えた。

キャンプ場のアルバイトは僕とあと2人の住人で行った。2人とも割と最近来た子で、今いる中では一番若い子と二番目に若い子だった。

バイト先のキャンプ場に着いて、スタッフのおばちゃんに言われたのは「今日は15時くらいに終わるよ」だった。僕は驚いた! 午前に終わるって聞いたし、お弁当も持ってきてないですよ。そしたら住人の若い子が「え? みんなに言いましたけど」と言った。

言いましたよじゃねえよ!

僕は怒鳴ってしまった。

なんでホワイトボードに午後なしって書いてあったのに訂正しなかったの? おかしいと思わなかったの? みんなって誰だよ。僕はみんなの前で今日仕事行く事言ったよ。だから十中八九みんな今日午後ある事わかってないよ。お爺さんと話してた時、いたじゃん一緒に。なんでその時言わなかったの? 自分以外に興味ないの? 僕がお祭りの話してたの聞いてなかったの? 瞬時に言いたい事が山ほど出たけど、原因の追求は後回しだ。お隣のお爺さんは誰に代わりに送ってもらおうか。お祭り、楽しみにしてたのに。

気を取り直して善後策を考えないといけないのに頭が全然働かない。そもそも今日の仕事内容、軽トラの運転じゃないらしい。軽トラの運転手がどうしても必要だから、バイトに入ったのに。それもホワイトボードに書いてあったよね?

とりあえず勤務時間になったので、働く。軽トラの運転以外の仕事の勝手はまったくわからないのでいちいち指示を仰いだ。住人2人は若いからか、人に指示することになれてなくて手持ち無沙汰になることが多かった。そして、普段働いてないから、午後まで体力が持つ自信がない。

テレビの人が合間にインタビューしてくるけど、それにも八つ当たりしてしまう。「働くってなんですか」ってなんですか。どういう意味ですか。逆に聞きますけど、働くの定義を教えてください。人によって定義が違うことについて意見を求めるのって意味あるんですか?

お昼の休憩になった。とりあえず、代わりにお隣さんを送ってもらうよう、共生舎に電話。

体力温存のため、椅子の背もたれにもたれかかって座る。タオルを頭にかぶせて、目をつむる。どうしよう、午後僕だけ抜けて、共生舎戻って、お祭り行って、その後ここに戻ってきて2人を迎えに来るか? いや、それは流石に無駄が多すぎる。バイト先、共生舎、お祭りの場所まではそれぞれ30分かかる。それに3人のバイトを2人で回すのも大変だ。結局お祭り諦めるしかない。テレビの人にお祭りの様子を見せてあげられないのは残念だけど、それはまぁ仕方ない。頭が破裂しそう。抑えきれない。

バチーン!

僕は頭に乗せていたタオルを地面に叩きつけて、立ち上がっていた。

怒りに任せて叩きつけたので、タオルでも大きな音がして、周りにいた全員が振り返った。

僕はピョンピョン跳ねながら「ごめんなさいこんなの初めてで、でもどうにも怒りが抑えられないです」と言った。飛び跳ねたのはそれが一番怖くない動きだと思ったからだ。

バイト先のおばちゃんは、僕の肩に手を回してなでてくれた。僕は顔を伏せて「いやー、僕は怒らない人だと思ってましたけど、人って怒るんですね」と言った。おばちゃんは「そうだよ、世の中に理不尽なこといっぱいあるんだから、でもそのたびに取り乱してたら何も守れないよ」とやさしく言った。僕は少し涙が出て、タオルで顔を拭った。

それでも、それで気が晴れたわけじゃない。

午後のバイト内容は、キャンプ客の車の監視のようなもので、ほとんど僕がやることはなかった。

おばちゃんは僕を気遣ってくれて、バイトを14時までにしてくれた。

怒りは帰り道も収まらない。車内で会話はない。車の運転してもらってんだから、その間運転手が退屈しないように話しかけるべきじゃねえのとか、バイトなのにその服装どうなのとか、どうでもいいことにまで腹が立ってくる。クラクションを思いっきり鳴らしたくて堪らなくなった。

祭りには少し遅れて行くことができた。お肉もいっぱい食べれたし、ビールもいっぱい飲んだ。お隣さんと約束してた映画は行く気分にならかったのと、お酒を飲みすぎて眠ってしまった。代わりに他の住人が別の映画を見に行ったようだ。よかった。

結局、今日僕はいつもより楽な仕事でお金をもらい、お祭りに行って美味しいものを食べられ、お爺さんとの約束も守れたわけで何ひとつ失ってない。だけどこれを書いてる今でも頭に血が登ってくる。

僕だけバイト午前で帰ればよかったんだ。それで他の人に2人を迎えに行ってもらえばいい。それを提案されたけど、他の人の負担考えてそうしなかった。でも、僕がイライラする事よりはそっちのほうが全体の損は少なかったかもしれない。テレビの取材も続いていたけど、最後まで刺々しく接してしまった。いい人だったのに。

この怒りの原因は、僕が今日他の人のために動いた事だ。「こんなにしてやったのに!」と思っているからだ。自分のために動いてたら、腹は立たない。残念だってがっかりするだけだ。

ああ、それにしても

怒りに対象は要らないんだな。恨みには対象が必要だけど、恨んでる気持ちはない。ただ、ひたすら攻撃的な気分だ。誰でもいい、むしゃくしゃしてやってしまいそう。

こんな自分もあるんだ。知らない自分がまだあった。