この時期は欝期のはずなんだけど、どうにも落ちきれなくて低空飛行したまんまなので、どん底に落ちるために借りてきた。
しかし、山田洋次特有のあたたかさに包まれてしまった…。
山田洋次の映画を観るたびに、「お疲れ様でした」とか「気をつけて」とかそういう一言の持つ意味に気が付く。
普段はみんな言ってるから言ってるだけだけど、その一言には相手を思いやる心からの優しさが含まれている。
その辺ぼくはまだまだで、そうやって気付くけどまだ本当の挨拶をすることができない。
この『息子』は
田舎に住む父親と都会でフリーアルバイター生活を送る息子との対立と和解を通して、家族の真の幸福を描くドラマ。
(goo映画)
ってあらすじらしいんだけど、「対立と和解」って感じはしなかったな。
対立なんてしてなかった。
このあらすじを読んでしまったせいで、哲夫が父に告白するシーンはハラハラして、目を背けたくなってしまった。
そのあとのシーンは本当に素敵だ。
ところで、この映画のBGMに時計の針の音のようなものが入っているのが気になってしょうがない。
劇中で父に「時限爆弾抱えてるようなもの」って言ってるから、死へのカウントダウンなのかと思って、そこでもハラハラしてた。
特にラストシーン前。
その辺のアクション映画よりずっと緊張感ある。
正直なところ、今の時点での感想は「歳は取りたくないなぁ」だ。
ネットがあればあんな風にひとりぼっちになることはないのかもしれない。
今だって家から一歩も出なくてもスカイプで友達と話せる。老人になってもそれは変わらないはずだ。
それでもやっぱり歳を取ると寂しくなるものなんだろうか。
今のぼくにはまだわからない。
現実の世界では何考えてるんだかわからんキチガイみたいな人がどこにでもいるもんだ。
山田洋次の作品にはそういう人もちゃんと出てくる。
ぼくが山田洋次を好きなのはそこ。
そういう人を見なかったことにするんじゃなくて、それも含めてその町の風景なんだ。
それを映画のフィルターを通して観ると、人間っていいなぁって心から思える。
年老いた親を狭い部屋に押し込めることは、人間らしいことなんだろうか。
朝早くから夜遅くまでビルの中にいることは?
本当のしあわせとは一体なんなのかって、考えてしまう。
それとは別に、ちょうど同じ日にこんな記事を読んだのでついでに貼っておく。
農家の平均年齢はなぜ70歳近辺なのか?
http://d.hatena.ne.jp/losttechnology/20100720/1279555213
あのあと、哲夫が実家に戻っても生活できない。
若者が農業で食べていくのは無理。
そして、哲夫みたいなフリーターの働き口も減っているとしたら、ぼくらは一体どうしたらいいんだろう?