山奥ニートの日記

ニートを集めて山奥に住んでます。

山奥ニート、北へ(その2)

目を覚ますと宇都宮だった。たっぷり2時間近く眠っていた。喉が乾いていた。バックパックには水が入ってたけど、お昼を過ぎてお腹も空いていたので駅のホームのセブンティーンアイスを買って食べた。130円、クッキー&クリーム。思ったより美味しい。クッキーとチョコチップの歯ごたえが心地よかった。黒磯行きの電車はとても混んでいた。空いてそうな車両に乗ったが、大きなリュックを抱えた人やスーツケースを持った人でベンチシートは埋まっていた。

僕はベビーカーを持った父親らしき男性の前に立った。スリムな体型よくで日に焼けている。隣には未就学児だろうか、2人の兄弟が座っていた。おそろいのドクターイエローのTシャツはお気に入りなんだろう。よくみると、ベビーカーの中には虫かごが入っていた。夏休みの虫取り準備は万端だ。兄弟は非日常に興奮しているようで、時折金切り声を上げていたが、向かいに座ったスーツの男性は微笑んでそれを見ていた。僕はなんだか安心した気分になった。電車は住宅地を抜け、田園地帯を走っていた。平たい黄緑の田んぼの向こうには、綺麗な新築の家が並んでいた。空は台風一過で美しい青で、入道雲も遠くに見えた。

北関東の町並みは美しいが新鮮味がなく、すぐに飽きてしまった。いつもなら、ここに住んだらどんな生活を送っていただろうと想像を広げるが、どうにもこの農業用に整理された畑と新築の家の町に住むのはごめんだ。豊かな土地かもしれないが、ワクワクしない、つまらない土地に見えた。

車内に視線を戻すと、鮮やかな黄色いスーツケースを足の間に挟んだ女の子が目に止まった。スーツケースの上にはうなぎパイの袋を持っている。東京を横切って、静岡から来たんだろうか。ケースとは別にひざの上にはリュックを乗せていて、シンプソンズの缶バッチと、アラジンのジーニーの小さなぬいぐるみ、それにうる星やつらラムちゃんの大きなキーホルダーを付けていた。スマホカバーはスポンジボブ、キャップはヤンキースだ! 僕はなんだかこの子が好きになってしまって、こっそり観察して情報を探したら、それ以上は何もなかった。派手な赤いマニキュアをしていたっけ。

父親ドクターイエローの兄弟は途中の田舎の駅で降りていった。父親の実家があるのだろう。女の子は黒磯まで一緒だったが、乗り換えで見失ってしまった。

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