『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』感想
僕はたぶん発達障害じゃない。
財布や鍵を無くした事は一度もないし、2つの事の妥協点を見つけるのは好きだ。
だけど、見ての通り机はぐちゃぐちゃ。
部屋の隅にはゴミ山ができている。使わないものはすべてそこに放り込む。
ニートだからそれで困ることはあんまりない。
けど、よくないとは分かってる。
作者の借金玉氏はブロガー、アルファツイッタラーだ。フォロワー数は3万人近い。
怒涛の連続ツイートと、新しい言葉を作るセンスと、ツイート上の喧嘩で有名だ。
「ポリコレ棒」という言葉は彼が作ったそうで、僕もよく使う。(ポリコレ棒=誰かを叩くために使われる人権的な正しさのこと)
喧嘩のほうは、この本の発売日前日にもバトっていたのが記憶に新しい。発売まで我慢してたのが、ようやく解禁。かなりの荒れようで、争い事に不慣れな僕は少し覗いただけで縮こまってしまった。
そんな借金玉氏が書いたこの本は、ツイート上の刺々しさが取れて読みやすい。
鬱の時期にハム将棋を17時間やっていたという話は、僕にもまるっきり同じ経験があるから驚いた。
僕が大学に行かなくなった頃のことだ。本当に朝から晩までハム将棋をやっていた。効果音がやたらと大きくて、サイトを開いたら真っ先にミュートする。将棋とは名ばかりで、こちらが決まった手順で駒を動かすと、相手も決まった手順で対応する。考える必要がほとんどない。頭を使う遊びはできなかった。なぜハム将棋なのかと言えば、他のゲームが上手くなるより将棋が上手くなったほうが、これからの人生で役に立つと思ったからだ。決まった手順で進めるだけだから、それで将棋が上手くなるわけがない。それでもほんの0.00001だけでも役に立つことをしてる気がして救われた。そうやって1年くらいひきこもっていたら、いつの前にか鬱は治っていた。
ハム将棋に時間を費やすような無駄な時間って、鬱から治る段階として必要なんじゃないかな、と僕は思う。
でもそうする余裕がないことのほうが多いだろう。
僕だってハム将棋やめられなかった結果、大学辞めている。
借金玉氏の本にはその回避方法が書いてある。ハム将棋に夢中にならず、やるべきことをやるための方法が。
そういえばこの前、発達障害ギークハウスのEQさんに英語圏のインターネットミームでADHDのことをリスと揶揄するって話を聞いた。
「私は気が散りやすいわけじゃないんだよ、私はただ… ちょっと!見て!リス!」
せわしなく動くリスと、ADHDを重ねて言っている部分もある。それに、秋に埋めたドングリを、どこに埋めたかわからなくなってしまう点も。
対して、借金玉氏は本の中で「無駄に終わっても、『ドングリ』を埋めておこう」と呼びかけている。
子供の頃、リスが冬に備えてドングリを土に埋めて多くの場合そのまま忘れてしまうという話を聞いたとき、僕は「間抜けな話だなぁ」と思いました。しかし、現在の僕は「リスはメチャクチャ賢い」と思っています。(p.175)
この部分は借金玉氏の考え方が一番よく出ている所だと思う。
発達障害の症状はなくせない。それを前提とした上でどうするか。
リスはリスのまま行こう。でもリスにはリスの知恵がある。
「僕はもう順位は気にしません、自分のレースを自分のスピードで走ります。(そで)」と借金玉氏は言う。
にもかかわらず、文中では「勝ちたかったら全力を出すしかないわけですよ。(p.151)」と書いている。
順位は気にしない。でも勝つ必要はある。
一体借金玉氏は何と戦ってるのか。
周りにいる同期や上司や定形発達じゃない事は確かだ。
借金玉氏はphaさんに影響を受けたと公言している。僕だってphaさんに憧れた部分は大きい。
生意気なことを言うのを今回だけ許してほしい。
借金玉氏と僕はphaチルドレンの光と影な気がする。
どっちが光でどっちが影かはわからない。
借金玉氏のツイートを光属性とは呼びづらいけど、社会的な立場で言えば会社員とニートでどう考えても僕のほうが日陰者だ。
借金玉氏は様々な工夫をしてこの日本社会でやっていこうとしている。一方で僕は日本社会が嫌なら新しい社会を作ってしまえと思っている。
向いているベクトルは正反対だ。
実際にお会いした事はないけど、きっと性格も全然違うんだろう。
だけど僕は彼の強さに憧れる。
リスはリスのまま生きていくしかない。
でも弱いままでいいわけないよね。
やっていきましょう。