シン・エヴァ感想(ネタバレ)
参加していたアニメーターのツイート
シンエヴァ一個だけネタバレさせて
— げそいくお (@gesoikuo3) 2021年3月8日
この映画は誰かと見終わることが大事だと思う
映画が終わって、場内が明るくなった後、僕はこう思っていた。
「この映画館で、この映画を一番よくわかったのは僕だ」
こんなのエヴァじゃない、とか言ってるおまえら!
あんなにわかりやすく書いてるのに、わかってないやつが多すぎる!
改めて言うのも野暮なんだけど、エヴァは庵野秀明の私小説なんだよ。
エヴァはずっとオタクのためのものだ。
オタクなら、庵野秀明が関わったものを当然予習してきてるよな!
よい子のれきしアニメ おおきなカブ(株)
【庵野監督・特別寄稿】『エヴァ』の名を悪用したガイナックスと報道に強く憤る理由
エヴァンゲリオンの粗悪品(グッズやゲーム)を量産してしまう。
新しくヴィレ(カラー)を立ち上げて、エヴァンゲリオンをやり直そうとするも
上手くいかなくて鬱になってしまったシンジ(庵野)。
そんなシンジ(庵野)を癒やしたのは、第三村(ジブリ。素材提供『となりのトトロ』)の人々。
(ただ、「おおきなカブ(株)」では『風立ちぬ』で声優やって、特に変わらず帰ってきたとなっているので、第三村の図書館にあった安野モヨコの本から、やっぱり庵野を癒やした最大の要因は妻なんだと思う。)
シンジが立ち治った理由が薄い、という感想があるけど、あれは劇中では短い間だったけど、現実では25年経ってるわけだからね。現実とは違う理由を創ってシンジくんを立ち直らせたほうがお話としては優秀かもしれないけど、そこで嘘をつかないのが庵野秀明の誠実さだと思う。僕らはずっとその、嘘がつけない庵野秀明が好きだったんじゃないのか。
あと、全裸や下着姿のアスカに、まったく劣情を催さなかったのって僕だけ?
なんで前はこんな中学生の体にエロさ感じてたんだろ、って思うくらいだった。
アヤナミはシンジに「名前をつけて」と頼む。(上記「おおきなカブ(株)」で安野モヨコは、庵野から新しいアニメスタジオの名前をつけてと頼まれる)
アスカもレイと同じく、コピーだったらしい。つまり誰かの創作物。つまりただのアニメキャラ。それがシンジと結ばれるのはありえない。ケンスケとアスカの2人はジャンとナディアですね。
そしていよいよ、打倒ネルフのためにヴンダーが発進する。
あそこ、めちゃくちゃ往年のガイナックス感があったよね。惑星大戦争のBGMも最高。
それに対して、ヴンダーの同型機が何台も現れる。
(これは上記声明の福島ガイナックスやGAINAX WEST始め、いろんなガイナックスが知らないままできていたってこと)
しかも、最後に粗悪エヴァたちは、巨大なドリルの形になる。(ガイナックス制作の『天元突破グレンラガン』。でもグレンラガン作ったスタッフはTRIGGERに移って、シン・エヴァにも多く参加してる)
おそいかかるエヴァのなりそこない。
「エヴァを射出するまで耐えるんだ!」
目まぐるしい戦闘を観ながら、僕は考えてた。
これだけ、すべての配置がメタ的意味を持つなら、マリはなんなんだろう。
アスカは旧劇から一貫して、他者の象徴だ。
カヲルは幾原邦彦、および尊敬するアニメの先輩。
なら今までシンジとろくに絡んでいないマリは何を表すんだ。
13号機を壊せないアスカ。自分のATフィールドが邪魔しているという。これまでずっとATフィールドは自分を守るバリアだったのが、ATフィールドがあることによって手が出せない。
シンジを撃とうとするサクラ。シンジが動けなくなればエヴァに乗らずに済むからだと言う。何勝手に期待してんだ。LASへの決別。
はてブコメントであったコメント
それを旧劇では「気持ち悪い」と言ったんだ。
シンジとゲンドウはマイナス宇宙で対峙する。
ここでゲンドウもまた、庵野秀明の一面だったとわかる。
オタクとしての庵野秀明。
ゲンドウの目を開かせたユイと、シンジの目を開かせた第三村は同じものだ。(決してアヤナミではない。アヤナミのみによって立ち直ったのなら、アヤナミが死んだときまた沈むはずだから)
Qでのミサト始めヴィレ面々とのディスコミュニケーションを、シンジは許す。
悪意を持って捉えるのではなく、好意を持って捉え直す。
そしてゲンドウに対しても、好意を持って捉え直すシンジ。
「そうか、お父さんはお母さんを見送りたかったんだ」
こういうの大好きなんだよ僕は!
ゲンドウのシンジに対する思いは、子供がいない僕にはちょっとわからない。
庵野秀明にも子供はいないはずだ。
シンジが怖かった、というのは若い世代が怖い、とまで広げて解釈していいのかな。
シンジのヴィレ若手への不信は、庵野の若手アニメーターへの不信もあるのかもしれない。
35歳でエヴァ作った庵野秀明はもう60歳だ。老いへの恐怖はきっと次回作以降で描いてくれるだろう。
浜辺に座るシンジ。
どんどん、背景が簡略化されていく。「よろしくおねがいします」と投げられた絵コンテ。
TV版と同じになっていくのか、やっぱり庵野はいつもの庵野なのか、と思われたとき、マリが現れる。
エヴァンゲリオンはどんなシーンから始まったか。シンジが迎えを待っているところから始まる。
世界は再構成された。ループでもパラレルでもない。
「だーれだ」
シンジの目を開かせるマリ。
その格好は今までのアニメっぽい服装ではなくて、別の漫画の登場人物のよう…。(キャラデザに安野モヨコ入ってたのはこのため? マリの名前は制作初期段階では「マリコ」だったらしい。また安野モヨコは古い歌をよく歌っていると『監督不行届』で描写される。また『監督不行届』では結婚以前の庵野は数週間同じ服を着ていたという。もしかしたらモヨコに何度も臭いを指摘されたことが、マリの匂いを嗅ぐ描写に繋がっているかも。)
駅なのに電車に乗らない。電車はエヴァにおいて精神世界を表している。その電車に乗らずに外に出て行く2人。
今回の主題歌。PVは庵野監督。
これ、完全に宇多田ヒカルを妻として撮ってるでしょ。
彼女にしては宇多田ヒカルの服が気合入ってなさすぎる。駆け引きとかを超えて、安定した夫婦な関係。
『エヴァ破』を観たとき、興奮したよ。
でも『シン・エヴァ』で描かれた愛に比べたら、そんなのちっぽけなものだ。
だって王子様がお姫様を助けるなんて、ただのフィクションじゃん。
庵野秀明が鬱になって、スタジオに行くことさえできなくなったと知っていた。
ガイナックスで利用され、芸大時代の友から裏切られて、作品は叩かれて。
だから『シン・エヴァ』の大半は他のスタッフに任せるか、あるいは全部ひっくり返してめちゃくちゃにするかのどちらかだと思っていた。
でも庵野秀明は、それを真正面から向き合った。
信じられない。でも庵野はやったのだ。
「試写会に行った知り合いが、一人も面白いって言ってないんだよね(笑)」って言ってた岡田斗司夫。それはお前にはわからないと思ったからだ。
庵野秀明はもうエヴァンゲリオンを創れないと書いた小山晃弘。それはお前が思う限界だからだ。
女キャラは聖女(レイ)と娼婦(アスカ)に分けられるとか言ったどっかの誰か。庵野はそこに25年かけて、妻(マリ)を追加したぞ。
「もう少しこうならよかった」とか言ってる奴ら。ちっさいこと言うな。男の旅立ちだ。祝ってやれよ。
インターネットのオタクたちは庵野秀明をオタクを苦しめて喜んでいると思ってる。
それって何年前のインタビューだよ。
『アオイホノオ』や『監督不行届』や各種ドキュメンタリーや、他の関係者の話を見てると、どうもそんな意地の悪い人には思えない。
嘘がつけない、特撮馬鹿だ。
よくも悪くも、自分がどう見られているかを気にしない人だ。
25年かかったけど、それは必要な時間だった。
人間はここまでできるんだ。
海猫沢めろんさんが「シン・エヴァはどうしたら大人になれるのかが描かれてなくて、アップデートされてない」と言ったのに対して
— 葉梨はじめ(山奥ニート) (@banashi) 2021年3月9日
滝本竜彦さんが「それはエヴァの仕事じゃない。僕たちの仕事じゃないか」
と言ってたの、めっちゃ格好良かった。