山奥ニートの日記

ニートを集めて山奥に住んでます。

日記2019/04/17

スマートフォンが届いた。

妻が僕に送ったものだ。

最近僕がTwitterもblogも書かないもんだから、何をやっているかわからないと業を煮やして買ってくれた。

一年ほど前に5000円のFireタブレットを買ってしばらく使っていたんだけど、どうにも鈍い。カメラも少し暗いと見れたものじゃなく、次第に使わなくなっていた。安物買いの銭失いだ。

スマホを手に入れたと言っても、とりあえずはwifiだけで使うつもりだ。どうせ山奥を降りることなんてあまりない。最近じゃゼロシムなんて言って基本料がタダのものもあるみたいだけど、必要に迫られてから考えよう。

そんなわけで、午前十時ごろ布団の中から妻に「おはよう」と送る。

しばらくノートパソコンを開いて何かやってるうちに腹が減ったのでリビングへ。

イタドリか何かの山菜のアク抜きをしててコンロが全てふさがっていたから、アルミホイルにマヨネーズで土手を作って卵を落とす。ウィンナーと一緒にオーブントースターに入れて10分。昨日の残りのご飯の上に乗せて食べる。

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僕の知らない洋画を2~3人が見ていた。

部屋に戻って、さて何しようと思っているうちに鼻血。

この時期は鼻血が出るものなのだ。子供のころからずっとそう。

花粉なのか季節の変わり目なのかわからない。

他の人は滅多に鼻血を出さないと知って驚いたのは二十歳を越えてからだ。

鼻をかんだ時に出る鼻血はすぐ止まるが、今日みたいに自然と出たときはなかなか止まらない。

鼻に詰めたティッシュがみるみる真っ赤に染まる。

何年か前に一回医者に診てもらうべきだと友達に言われて、耳鼻科へ行った。

女医に「いつからですか?」と聞かれ、「産まれてからずっとです」と答えたら笑われて、それきりだ。

結局原因はよくわからない。

同じ鼻血よく出る仲間と出会ったときに、鼻の内側をコテで焼かれたという話を聞いた。

そんなの恐ろしくってたまらない。

山に住む爺さん婆さんは医者嫌いが多い気がするけど、僕もその一人に連なるようだ。

ようやく血が垂れてこなくなったので、外にある手洗い場で顔についた血を落とす。

出血したのは300mlもないだろうけど、鼻血が出た後は貧血なのか頭がぼーっとしてふらふらする。喉が乾くし、塩辛いものものが欲しくなる。

「血が足りねえ、何でもいい、食いもんじゃんじゃん持ってこい」

カリオストロの城のルパンの気分だ。

ルパンと言えば、原作者のモンキー・パンチさんが亡くなったらしい。

彼の人の漫画は一度も読んだことがない。

Twitterで流れてきた「これで銭形警部が一人飯する漫画が書けるな」というのには笑ってしまった。

不謹慎な笑いだ。

自分が死んだことをネタにされる気分がどういうものなのか、想像がつかない。

結局、午後はだるくなってしまって、文庫本を3分の1ほど読んだだけで終わってしまった。

日暮れ前に、せっかくスマホがあるのだから、何か面白いものを撮ってフォロワーに見せてやろうと家の周りをうろついたが、枯れかかったスズランが弱々しく咲いているだけだった。

グループチャットの通知が来る。

買い物に行った人が、刺身を買ってくるらしい。

今晩は宴会になりそうだ。

だるさは抜けないけど、一人で何かする気力もないので、重い頭でリビングに行ってみようか。

山奥ニートは"超"山奥ニートになりました

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我らが五味集落までの道が、工事により全面通行止めになりました。

2018年夏の台風のせいで、一部の道に穴が開いて鉄板の上を車が通っている状態でした。

これからは町に行くのに、大きく遠回りする林道を通らなければいけません。

今まで駅まで1時間半だったけど、プラス30分以上は余計にかかります。

僕は通行止めになって以来まだ町に降りてないけど、話によると今まで以上に細い道で、待避所もなく対向車とのすれ違いは大変らしい。10分で標高650mを駆け上る道で、険しいけど景色はいいみたい。

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この工事、あと2年続くそうだ。(冬期は工事中断)

こんな山道を直してくれる日本はすごいけどね。

そういうわけで、送迎のお願いはなるべく控えてくれると嬉しいです。幸い、行政がやっている住民バスは今まで通り運行してくれるみたいです。

今までは配送業者がほとんど毎日来てくれてたけど、これからは週に一度程度にするって。

今までここは山奥だったけど、これからは超山奥です。

でもとりあえずは、変わらずのんびりやってます。

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※自力で来る人用案内

じーまさんが画像用意してくれました。

走行してるとだんだん不安になってくる道ですけど頑張れば着きます。共生舎に向かう方向に向かって写真を撮影しています。

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ニート祭り2019、運について

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まだ山奥に戻っていませんが、ようやく安定したネット環境の場所に着きました。

ニート祭り2019お疲れ様でした。

立ち見多くて大変そうでした。年々人が増えてる気がします。

最後の「運」についての話を上手くできなかったので、あの後考えたことを書きます。

 

ニートはどうしたら幸せに生きていけるか、という問いに対して若新雄純さんが「ニートで成功するのは運がいい奴だ。人生運が7割」と言っていた。

でも、この「運」という言葉が使われるとき、二種類の意味がある。

僕らが人生において運という言葉を使うとき、それは多くの場合「縁」のことを言っている。若新さんが笑顔と清潔さで引き寄せられると言っていたのはこっちのほうだ。

最近になってようやくわかってきたけど、人間ってのは気づかないうちに他の人のお世話になってるらしい。

冷蔵庫にプリンがあったらラッキー!と思うけど、それは僕のためにプリンを残して置こうと思った人がいるからだ。乱数によって分子構造がプリンの形態を偶然取ったからそこにあるわけじゃない。僕のことを考えてくれる人がいたという「縁」があったから、プリンがあるのだ。身だしなみを整えるのが苦手な僕にとっては耳の痛い話ではあるけど、きっといつも笑顔で清潔そうな格好をしていれば、「縁」は強化されていく。

だけど運ってそれだけじゃない。

笑顔で清潔な人と、怒ってて不潔な人がサイコロを交互に振って、どちらかの出目が常にいいなんてありえない。この世界には「縁」じゃない純粋な「運」がある。生まれながらの障害だったり、雷が落ちて感電したり、どうやったって自己責任にできないことがある。

僕はTRPGボードゲームが好きだ。ゲームをしていると、どうしたって「運」と向き合うことがある。性格がいいやつが勝つわけじゃなく、絶対に負けたくない非道な奴にも、「運」で負ける。低い確率の不利益が連続して起こると、プレイが雑になって、悪態の一つもつきたくなる。

ポーカーには「ティルト」という言葉がある。「プレイヤーが感情にかられて合理的な行動ができなくなった状態」という意味だそうだ。僕はポーカーをやらないけど、その気持ちはよくわかる。また1ゾロかよ! また土地かよ! 嫌になってくる。

プロのポーカープレイヤーはティルトをどうやって回避してるんだろう。ある人はこう言う。「ポーカーが単なるゲームだってことを思い出すんだ。ゲームを楽しめなくなっていたら、もうプレイする必要はない」。

僕は運のいいニートだ。「縁」のいいニートだったと言ってもいい。

だけど、本当の「運」はまだ試されてない。これはコントロールできない。

「運」が悪いとき、せめてティルトに陥らないようにしないといけない。

僕はニートで人生経験が少ないから、自信がない。

だから僕は、小さな楽しみや可笑しさを見つけるんだ。

人生がゲームで、楽しいものだと常に思えるように。

 

2018年延長戦

本が終わらなかったので2018年延長戦です。

山場を超えてから一歩も進んでない。

2018年はこんな感じの一年でした。

 

1月

  • 本を出版を目標とする。山奥ニートは日々変化していて、ここらへんで一度形にして記録しておきたかったから
  • 朝日放送『取扱注意 ぬるま湯くん』2018/01/12放送
  • 日経ビジネス 2018.01.22 No.1925『今週のピックアップ』

2月

  • CBCラジオ北野誠のズバリサタデー』2018/02/03放送
  • NHK和歌山『あすのWA!』2018/02/05放送
  • 東京でイベント『ニート祭り2018 ~ひきこもらず、ニート的感性で生きる!~』
  • イベントバーエデン本店で山奥ニートバー
  • 疲れすぎて一週間寝込む
  • 女性セブン 2018年2月15日号『「老いたる村」が楽園になっているじゃないか』

3月

  • 出版社決まる
  • 妻の元交際相手がストーカーしてくるので警察、弁護士に相談
  • 記者さんの車が嵌って、レッカー車を呼ぶ

4月

5月

  • 無印良品の取材
  • GW気分が抜けず、日向ぼっこして一日終わったりする

6月

  • 高校の同窓会に行く。案の定誰も話す相手がいなかった
  • 不登校新聞 483号『ひきこもりの僕が行ってみた ニートが共同で暮らす場に』

7月

  • 本を書くために妻の家から図書館通い
  • 中退した大学に侵入するも、怖すぎてすぐ帰る

8月

9月

  • 東京でイベント『"ニート的感性"でシェアする生き方、働き方』
  • 無印良品の雑誌『くらし中心』

10月

  • 本のために住人にインタビューをする
  • 妻としていたマーベルシネマティックユニバース全部見るマラソン完走

11月

  • 本の締切に設定していたけど無理。わかってたけど
  • 村の祭り
  • 本で「よくある質問」が知りたかったので2chにスレ立てる

12月

  • 人を追い出したり、追い出さなかったりする
  • 地域の人が共生舎すぐの崖に車ごと落ちる。救急車消防車警察が来る
  • 雪虫に関するツイートがバズったけど別に何も起こらない
  • かぼちゃ貰ったり、みかん貰ったり、りんご貰ったりする
  • 地域おこし協力隊の人のクリスマス会でご馳走になる

13月

  • 本完成?

 

やっていきたい・・・。

難なく本書いてる借金玉さんやえらいてんちょう凄すぎる。

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SSSS.GRIDMANのテーマは友情ではない

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独りじゃない。いつの日も、どこまでも

『SSSS.GRIDMAN』のキャッチコピーです。これは原作である『電光超人グリッドマン』のOP曲の以下の歌詞の引用です。

もしも心をすりむいても おびえないで もう君は一人じゃない

作中では何度も「友達」という言葉が使われます。六花は自分がアカネの友達だと言うし、グリッドマンは最終話で「友情の大切さを改めて知ることができた」と言います。

だけど『SSSS.GRIDMAN』のテーマは友情ではないです。

この作品で引っかかってる人って、たぶん友情がテーマだと思ってるんじゃないかと思います。最終話見るまで僕がそうでした。

もし友情がテーマだと見た場合、正直この作品はあまり良い出来とは言えません。
六花はアカネの友達という設定を覆すことができません。どんなに六花がアカネのことを友達だと思っていても、それはアカネがそう設定しただけです。結局、最後まで六花が神の意図を越えることはなかったように思います。

内海は1話で記憶喪失の裕太に優しくしていましたが、結局それは裕太ではなくグリッドマンでした。本物の裕太と内海の間には友情があったんでしょうが、作中での友情はかりそめのものです。

 

『SSSS.GRIDMAN』の本当のテーマはなんなのでしょうか。

この作品は過去作へのオマージュがたくさん盛り込まれています。
電光超人グリッドマン』はもちろん、キャラクターのデザインはトランスフォーマーへのオマージュ(SSSS.GRIDMANのトランスフォーマー要素解説 その1 - ニコニコ動画)です。その他、ウルトラマンシリーズ、スーパーロボット金八先生実相寺昭雄大張正己金田伊功などなど。
作品のほとんどがオマージュで構成されてると言ってもいいくらいです。

 

僕は『SSSS.GRIDMAN』のテーマは「創作への賛歌」だと思います。

最終話でアカネは現実世界に戻り、覚醒します。おそらくひきこもりだった彼女はこれから部屋の外に出ていくことでしょう。
そので彼女の力になるのは、六花たちの世界での出来事です。六花たちは彼女が作った創作物に過ぎません。だからと言って、六花の言葉に意味がないわけではない。
六花という存在を作れたアカネなら、きっと六花のようになることもできるはずです。
この物語は結局、アカネが見た夢でしかありませんでした。でもその夢こそが人間にとって大事なんです。
この作品がオマージュだらけなのは、たくさんの過去の好きな作品から力をもらってこの作品ができたことを伝えるためです。スタッフの趣味というだけじゃない。
人は創作物から力を貰うことがある。

「アニメやゲームなんて時間の無駄だ。そんなものをしたって現実は何も変わらない」なんて言う人がいます。

そんなわけがない。
人間にとってフィクションは必要です。
古代の人類は壁画を書きましたし、宗教だって言わば創作物です。
人間はフィクションによって発展してきたし、フィクションによって殺し合いになることもあった。

 

アカネがアニメの世界に浸った理由は明かされません。学校でいじめられたのかもしれない、親との関係が悪かったのかもしれないし、友達と死別したのかもしれない。
だけどアカネには、大好きな特撮があるし、自分の創作物もある。
「独りじゃない。いつの日も、どこまでも」なんです。

アカネはクラスメイトを殺し、裕太も殺そうとしましたが、罰を受けることはありません。だって自分の創作物を直したり消したりするのは、何も悪いことじゃないですから。

最終話でアカネは六花から定期入れをプレゼントされますが、現実世界にもそれと似た定期入れがあります。
いろんな解釈の余地がありますが、一番夢のないものだと「もともと持っている定期入れを、自分が創作したキャラクターから貰ったものだという設定にした」というものでしょうか。でもそれで全然いいんです。それだけで彼女は独りじゃなくなる。

 

『SSSS.GRIDMAN』は一見「友達は大事」だというメッセージなようで、実はその逆で「友達がいなくても、君は独りじゃない」と言っているんじゃないでしょうか。

単純に友達の大切さがテーマだった1993年の『電光超人グリッドマン』を引用しつつ、2018年に合ったテーマに作り変えた『SSSS.GRIDMAN』 。

素晴らしい作品だったと思います。

 

 

余談1

SSSS.GRIDMAN 第4話小ネタ解説 - ニコニコ動画がとてもよく出来ているのでおすすめ。4話~11話まであります。たぶん最終話も上がるはず。

 

余談2

裕太がグリッドマンに選ばれたのは、本来アカネのことを好きになる設定だったのにバグって六花のことを好きになったから、なわけです。

で、現実世界のアカネはコンピューターワールドのアカネと違って、立花みたいに長い髪の毛です。六花はアカネの最高の友達として設定されているから、きっとアカネ自身のこともたくさん投影されているでしょう。

裕太が立花に惹かれた理由(バグが起こった理由)が、六花の中にある現実世界のアカネ成分だとしたら、エモいなぁ。そうだとすると、あの世界で唯一裕太だけは現実世界のアカネを肯定してることになるわけで。

 

余談3

9話「夢・想」は本当に素晴らしい出来でした。
1話単位で見たら『SHIROBAKO』の23話以来です。
アカネが可愛すぎて、歯を食いしばって耐えないと発狂しそうでした。
お墓のシーンの空の青がとても印象的です。
監督は五十嵐海さん。名前覚えとこ。湯浅政明っぽくて好きな作画。

 

余談4

TRIGGERの次回作は映画『プロメア』。
グレンラガンキルラキルの監督今石洋之×脚本中島かずきだから期待しないわけにはいかない。久しぶりに映画館行こうかな。

祭りを手伝う山奥ニート

11月3日は集落のお祭りでした。

祭りと言っても、屋台が出たり、神事を執り行ったりするわけじゃない。

昔はちゃんとした祭りで、獅子舞も出てきたらしいけど、今では集落に住んでいるのはたったの7人。

年々簡略化されていって、今ではお宮にお供え物をして、もち撒きして、みんなでお弁当を食べるだけになってしまった。

だけど今年は共生舎から12人行ったからかなり賑やかだったなぁ。

良いことです。

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お宮は山を20分ほど登った場所にあるから、爺さん婆さんだけでは大変だ。

今年は手がたくさんあったから楽だったな。

一年に秋と春の2回しか原住民に会う機会はないから、この時くらい顔見せしたい。

限界集落と言っても、実は関係人口は結構多い。

普段は近くの町に住んでいて、盆や正月などにこの集落に集まる家族が何組かいる。

盆や正月の時は家族水入らずでお邪魔したら悪いかなと思って、声をかけない。

でもこの祭りにも来てくれたので、顔見せできた。

そこから草刈り頼まれたり、何かに繋がることが多いからね。

でもたくさん飲んだからあんまり覚えてないです。毎年こう。

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Netflix『ドラゴン王子』が王道ファンタジーしてて面白い

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www.youtube.com

『アドベンチャー・タイム』ロスから立ち直れません。

『SSSS.グリッドマン』も『ゾンビランドサガ』もそこそこ面白いけど代わりにはならないよ……。

そんななか、Netflixオリジナル作品『ドラゴン王子』をタイトルのダサさに惹かれて見たんですよ。

その時リビングには僕の他に3人いたんですが、全員嵌っちゃって結局一気にシーズン1最後まで見てしまいました。

それどころか、そのまま1話に戻って2周目も最後まで見そうな勢いだった。

でも、ウィキペディアにないし、感想言ってるブログも少なかったので僕が書く。

山奥ニートについては僕が書かなくても誰かが書くが、ドラゴン王子は僕が書かなきゃ誰が書く!

騙されたと思って見てくれ『ドラゴン王子』!

 

2018年9月16日日本公開。
Netflixオリジナル作品
シーズン1は全9話×26分。
原作・制作: アーロン・イハス、 ジャスティン・リッチモンド

■あらすじ

公式のあらすじわかりにくいんで自分で書きます。

 

魔法の国ゼイディアと人間の国カトリスは戦争直前の状態にあった。
人間がドラゴンの王を殺して、その卵も破壊したからだ。
エルフはその報復に人間の王と王子を暗殺する計画を立てる。

暗殺部隊の1人であるエルフの少女レイラにとってはこれが初仕事。
城の近くで決行の時を待つレイラだが、人間の兵士に発見されてしまう。
こともなく兵士を追い詰めるレイラ。しかしその怯えた目を見て、殺さずに逃してしまう。殺さなかったことを暗殺部隊の隊長から責められたレイラは、待機しろという命令を無視して、単身で城に忍び込み王と王子を暗殺することにする。

一方、王の息子カラムは剣の腕も乗馬もからきし駄目。憧れの女性にも笑われる毎日。王と血の繋がっていない彼は、自分に何ができるのか悩んでいた。

カラムの義理の弟で、王の実の息子エズはいたずら好きで周りに迷惑ばかりかけてばかり。友達はペットのカエルしかいなかった。

レイラに襲われて、逃げるカラムとエズ。逃げ込んだ部屋には、破壊されたはずのドラゴンの卵があった。これをドラゴンに返せば、復讐の理由はなくなり戦争は止まるはずだ。

しかしその時、エルフの暗殺者たちが城に侵入。人間の王は殺され、王の側近である魔法使いヴィレンによってカラムとエズも死んだことにされる。

このままでは人間の国と魔法の国の全面戦争になってしまう。戦争を止めるためにカラム、エズ、レイラの3人は卵を持ち出し、ドラゴンに返すための旅に出る。

■感想

王道ハイファンタジー、しかもボーイ・ミーツ・ガール!

なんかね、作り手を信用できるんですよ。

監督も脚本も、少なくとも日本じゃ有名な人じゃないんだけど。

たとえば敵に追われて逃げる主人公。そのときに、単に走るだけじゃなくてカーテンをかぶせたり、飾ってある鎧を倒したりして追手を妨害するんです。

それだけのシーンなんですが、主人公がちゃんと考えながら逃げてることがわかる。

それができてない作品ってけっこう多いですよ。そうなると、もう主人公がこのとき何を考えていたかとか考察する意味がなくなる。単なる脚本の都合で動くキャラクターになってしまいます。

この作品の登場人物は、しっかりと自分の立場と価値観で物事を考えています。だから生き生きとして見えるんじゃないかなぁ。

ファンタジーっていかにその世界が本当に存在すると思わせられるかってジャンルだと思います。
この作品の場合、盾の裏面にリベットがちゃんとあるんですよ。盾の表のパーツと裏のパーツがどう組み合わさっているのかが想像できる。

別のシーンでは、ドラゴンが瞬きするんですが、そのときに瞬膜が閉じるんです。これは現実の爬虫類などにある器官なんですが、それがちゃんと描写されてる。ドラゴンが生き物として描かれてるんです。

そういう細かいところの積み重ねが、この世界は本当にどこかにあるんだと思わせるんだと思います。

いつの間にか「ファンタジー」という言葉が「ゲームみたいな世界」の別名になってしまいました。

僕が見たかったのはそれじゃないんだ!

こことは違う世界、こことは違う常識で動いている人間が見たいんです。

『ドラゴン王子』はそのふざけたタイトルとは裏腹に、実に真面目にファンタジーしています。

思想も立場も違う主人公たちが協力して、大きな敵と戦う。

ベタだけど古くない。王道だけど、先が読めない。

キャラクターを掘り下げつつ、大きな物語に繋げる。

これがどれだけ難しいことか。

『ドラゴン王子』は信じられます。

みんな『ドラゴン王子』を信じろ。

 

■ドラゴン王子の魅力

・ダサい邦題

『ドラゴン王子』ってなんですか。ドラゴンプリンスじゃ駄目なのか。
でもドラゴンプリンスだったら僕は見てなかったなぁ。
このダサさがいい。海外ファンタジーっぽい。ドラゴンプリンスだと乙女ゲーみたいですね。
ドラゴンプリンスだと日本では他の作品の商標にひっかかるという噂も。

・王道ハイファンタジー

ライトノベルでよくあるRPG的な世界ではない、確固たる世界観。
背景美術が細かくて、中世ヨーロッパ風世界が美しいです。
今どきこんな王道なファンタジー珍しいのでは。
それともゲーム・オブ・スローンズの影響で、アメリカではハイファンタジー復古の流れがあるんだろうか。
魔法にいちいち触媒が必要なのがたまらないです。

・派手なアクション

3DCGですが、レベルはそれなり。でもアクションの動きがいいです。
後述の特殊な武器を使ったアクションシーンは一見の価値あり。
枚数少ないからちょっとカクカクしてますが、これはあえてみたいです。(英語版Wikipediaより)
個人的には大賛成。日本のアニメでCGだけなめらかすぎて手書き部分から浮いて見えることがよくあります。CGに合わせてコマ増やすよりも、CGのコマ数減らす『ドラゴン王子』の手法は正しいと思う。
影の付け方やディティールの省略の仕方が『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』に似てますね。技術の進歩でリアルにできるようになったけど、あえて省略して見やすくする手法はこれから増えていくんじゃないでしょうか。

・よく練られた脚本

脚本がすごく丁寧です。
1話の中だけでも伏線と回収がしっかりあるし、そことそこが繋がるのかーと忘れた頃に繋がっていくものもあるので気が抜けません。
シーズン2に向けて残された謎も多く、考察しがいがあります。
第一シーズンは3部構成です。
1~3話:王国の城編
4~6話:旅のはじまり編
7~9話:呪われたカルデラ
3話ごとに、書くべきことがしっかりと定まってるんですよ。
第一部は主人公たちがなぜ集い旅に出るのか。
第二部は主人公たちが互いに信頼していく様子。
第三部は主人公たちの成長がテーマです。
これがしっかりしてるから、どこに注目すればいいのかわかりやすくて見ていてストレスがない。
こういうの、日本のアニメの職人芸とは違って、アメリカではしっかり方法論が確立している気がします。

・魅力的なキャラクター

絵柄がアメリカンなんで、ちょっと抵抗があると思います。
アメリカの二次創作でこういう絵柄をよく見ますね。
頬の赤みを不自然に感じるのは日本人だからなんでしょうか。
まぁ見てるうちに慣れます。

・カラム

人間の王子(兄、養子)、15歳。
剣は苦手なんだけど、1話時点から頭いいんですよ。
ちょっとお調子者だけど、機転が効いて、根はいいやつ。
主人公が頭よくて解決策をどんどん出していくのは気持ちいいですね。
それでも大体は敵わないというバランスもいいです。
最終話ではまさに「主人公はこうでなくっちゃ!」って感じでした。

・エズ(エズラン)

人間の王子(弟)。
一番年下だけど一番有能。もはや呼び捨てにできない。
エズさん。いやエズ国王。さすがは王の器。人間の国は安泰ですね。
ペットのカエル(?)の色が変わるのがアニメ的に面白い。
怒ってる=赤、気分悪い=紫など。しかしあのカエルも只者じゃなさそうだ。
最初、カエルがドラゴン王子なのかと思ってたよ。

・レイラ

エルフの少女。
人を殺せない暗殺者。
弱みを見せないようにするのが実にエルフっぽくていいですね。
2人にまともな戦闘力がないから、最初は八面六臂の活躍。
でもだんだんと弱体化していく脚本が上手い。
露出は少ないんけど、お尻がセクシーです。
ここまで恋愛フラグが立ってないのも日本のアニメに慣れてると新しく思えます。
この世界のエルフは何種類かいて、彼女はムーンシャドウエルフです。満月の日は透明になって強くなります。
今あらためて見たら、髪型がNARUTOのサクラっぽいですね。走り方もNARUTO走りだし、スタッフにファンがいるのかもしれない。公式Twitterではナルトの誕生日をお祝いしていました。

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・ヴィレン

人間の国カトリスの魔法使い。敵っぽい。
主人公たちを殺せと自分の子供たちに命じます。
でも悪い人じゃなさそうなんだよなぁ。1話では本気で王様のこと助けようとしていたように見える。どこまで本心なのかわからないけど、この人の考えはよくわかる。

・アマヤ叔母さん

国境を守る人間の将軍。女王(故人)の妹だから主人公たちにとっては叔母さん。
盾を使ったアクションめっちゃ格好いいっす。
この人、生まれつき耳が聞こえないらしく、話すときは全部手話。
武器は背負っている大きな盾。
盾の先に割れ目が入っていて、ソードブレイカーのようにも使える。ちゃんとショートソードも携行していて、トドメをさす時はそっちを使うのもポイントです。

・武器が格好いい

登場人物が使う武器が全部格好いいんですよ。
主人公のひとり、エルフのレイラが使う武器は大きいバタフライナイフで、納刀モード、剣モード、鎌モードの三種類に変形します。
攻撃するときは剣モード、登攀したり足払いするときは鎌モードと自在に使い分けるのが実に鮮やか。
暗殺者のリーダーの武器も剣モードと弓モードがあるので、エルフの武器は全部2つの使い方があるんでしょうか。二刀流であることも、後々物語的に意味を持ってくるのがにくいです。
他のキャラクターひとりひとりの武器もそれぞれに工夫やギミックがあるので要チェックです。

・吹き替えのほうがいい

この作品は日本語吹き替えのほうがいいですと思います。
訳がおかしいなと感じる部分はあるんですが、主人公の憧れの女性クラウディアの声が日本語吹き替えのほうが圧倒的に可愛い。英語版だとかすれ声のおばちゃんみたいな声なんですよ。
字幕版は字幕版で、固有名詞を覚えられるという利点はありますけどね。 

 

ツイッターの感想まとめ

ほんとにこの作品は情報や感想がまだ少ないんですよ!
英語版のWikipediaもそんなに充実してるわけじゃないし。
でも面白いんですよ!

 

 

 

 

 


シーズン2の予想

2018年10月現在、シーズン1しか公開されていません。
ここからシーズン1のネタバレになりますので気にする人は読まないでください。

・王は死んでないのでは?

入れ替わりの魔法をあんなに意味ありげに出しておいて、何とも入れ替わってないのはありえないです。肉体が死んだので、エルフの誓いが解けましたが、王の精神は生きていて何かと入れ替わっているはずです。一番怪しいのは王のペットのオウムです。意味深にヴィレンが話しかけるシーンもありました。
そうなるとやっぱり魔法使いヴィレンはいい人っぽい。

・ドラゴンの王も死んでない?

ドラゴンの王も死んでるシーンを映さないから何かありそうです。
人間の王は何か責任を感じていましたが。
アバンタイトルに出ていたトリケラトプスのようなフリルのついたドラゴンは、ドラゴンの女王なんでしょうか。ドラゴンの王が空属性でしたが、女王は太陽属性なのかな。
まぁ魔法の生き物だし単体生殖できるのかもしれないけど。

・カラムの本当の父親は?

カラムはまだ王様のことを「義理の父」としか呼んでないんですね。いつかシーンがあると思いますが、あくまで彼は養子です。本当の父親がどこかにいるはず。わざわざ王様が養子を取るなんてよくわかりません。異常なまでの記憶力のよさと魔術への適正は何かの伏線なんでしょうか。なんとなく人間じゃないっぽいです。でも王が隠すくらいだから、あまり明るい話ではなさそう。

王が死ぬ前にカラムに託した手紙がありましたが、カラムが落とした後はクラウディアの手に渡っていました。ここにカラムの出自が書かれているんじゃないでしょうか。

・カラムvsソーレン、クラウディア

カラムvs初恋の人クラウディアはやって欲しいなぁ。クラウディアって自覚なく殺しかねない魔法使いそう。一回ガチバトルして欲しいです。息の匂い嗅がせてくる女なんてやめたほうがいいよカラム。

剣の師匠のソーレンとの戦いもアツいです。その時カラム側は魔法を使えない状態で、剣同士で戦って欲しいなぁ。この作品は「わかってる」のできっとそうしてくれると信じます。

今の所ギャグキャラっぽい彼らですが、どう主人公たちの前に立ちはだかるのか、ワクワクします。

・シーズン1のキャラクターが再登場?

アマヤ叔母さんとはきっと会うことになるでしょうね。馬に乗ってるから国境近くに先回りしているでしょう。
7話の魔法の短剣を持ったおじさんも再登場しそうです。あるいは彼に短剣を奪われたサンファイヤーエルフが出てくるかも。

・ヴィレンが持つ鏡とは?

この作品、まだ悪者らしい悪者がいないんですよね。だから奥に黒幕がいそうです。怪しいのはこの鏡くらいで、これが地獄とかに繋がっていてそこから黒幕が出てくるとかありそう。

・謎の箱

カラムが冬用のロッジから持ってきたおもちゃの箱。属性に反応するようですが、謎に包まれています。空、大地、太陽、月、星、海の6属性集めると開いたりするんでしょうか。六面体というのがTRPGのサイコロを思い出させます(むこうならTRPGと言えばD&Dだろうからd6はあまりファンタジーってイメージではないかも)。

ベイトにも反応してましたね。あいつ何属性なんだろう。光るから星か太陽?

・シーズンいくつまであるのか

BOOK1が「月」なので、6属性(+闇)分のシーズン6か7まである可能性が高いです。1シーズン9話だとすれば、54話か63話ですね。まだまだ楽しめそうで安心。だけどいきなり50話以上あると言われると見る気がなくなってしまったかもしれない。今のこのタイミングで出会えてよかった。

・カラムの絵が世界を救う

カラムが絵を描くのが得意だということは1話の最初の出番の時から言われてるんですよね。芸術的な剣さばきの話。カラムが魔法を使えたり、記憶力がよかったりするのは出自によるものだと推測できます。でも絵が上手だということは彼自身で身につけたもの。産まれではなく最後は彼自身の力が鍵となる話にちゃんとしてくれるはずです。

『ドラゴン王子』を信じろ。

 

シーズン2が待ち遠しい

シーズン2は2019年公開です。

やっぱりクラウディアとのバトルになるみたいですね。

魔法の源を失ったカラムの修行編もあるのかな。

待ち遠しいなー。

みんな来年までに『ドラゴン王子』シーズン1見よう!