山奥ニートの日記

ニートを集めて山奥に住んでます。

SSSS.GRIDMANのテーマは友情ではない

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独りじゃない。いつの日も、どこまでも

『SSSS.GRIDMAN』のキャッチコピーです。これは原作である『電光超人グリッドマン』のOP曲の以下の歌詞の引用です。

もしも心をすりむいても おびえないで もう君は一人じゃない

作中では何度も「友達」という言葉が使われます。六花は自分がアカネの友達だと言うし、グリッドマンは最終話で「友情の大切さを改めて知ることができた」と言います。

だけど『SSSS.GRIDMAN』のテーマは友情ではないです。

この作品で引っかかってる人って、たぶん友情がテーマだと思ってるんじゃないかと思います。最終話見るまで僕がそうでした。

もし友情がテーマだと見た場合、正直この作品はあまり良い出来とは言えません。
六花はアカネの友達という設定を覆すことができません。どんなに六花がアカネのことを友達だと思っていても、それはアカネがそう設定しただけです。結局、最後まで六花が神の意図を越えることはなかったように思います。

内海は1話で記憶喪失の裕太に優しくしていましたが、結局それは裕太ではなくグリッドマンでした。本物の裕太と内海の間には友情があったんでしょうが、作中での友情はかりそめのものです。

 

『SSSS.GRIDMAN』の本当のテーマはなんなのでしょうか。

この作品は過去作へのオマージュがたくさん盛り込まれています。
電光超人グリッドマン』はもちろん、キャラクターのデザインはトランスフォーマーへのオマージュ(SSSS.GRIDMANのトランスフォーマー要素解説 その1 - ニコニコ動画)です。その他、ウルトラマンシリーズ、スーパーロボット金八先生実相寺昭雄大張正己金田伊功などなど。
作品のほとんどがオマージュで構成されてると言ってもいいくらいです。

 

僕は『SSSS.GRIDMAN』のテーマは「創作への賛歌」だと思います。

最終話でアカネは現実世界に戻り、覚醒します。おそらくひきこもりだった彼女はこれから部屋の外に出ていくことでしょう。
そので彼女の力になるのは、六花たちの世界での出来事です。六花たちは彼女が作った創作物に過ぎません。だからと言って、六花の言葉に意味がないわけではない。
六花という存在を作れたアカネなら、きっと六花のようになることもできるはずです。
この物語は結局、アカネが見た夢でしかありませんでした。でもその夢こそが人間にとって大事なんです。
この作品がオマージュだらけなのは、たくさんの過去の好きな作品から力をもらってこの作品ができたことを伝えるためです。スタッフの趣味というだけじゃない。
人は創作物から力を貰うことがある。

「アニメやゲームなんて時間の無駄だ。そんなものをしたって現実は何も変わらない」なんて言う人がいます。

そんなわけがない。
人間にとってフィクションは必要です。
古代の人類は壁画を書きましたし、宗教だって言わば創作物です。
人間はフィクションによって発展してきたし、フィクションによって殺し合いになることもあった。

 

アカネがアニメの世界に浸った理由は明かされません。学校でいじめられたのかもしれない、親との関係が悪かったのかもしれないし、友達と死別したのかもしれない。
だけどアカネには、大好きな特撮があるし、自分の創作物もある。
「独りじゃない。いつの日も、どこまでも」なんです。

アカネはクラスメイトを殺し、裕太も殺そうとしましたが、罰を受けることはありません。だって自分の創作物を直したり消したりするのは、何も悪いことじゃないですから。

最終話でアカネは六花から定期入れをプレゼントされますが、現実世界にもそれと似た定期入れがあります。
いろんな解釈の余地がありますが、一番夢のないものだと「もともと持っている定期入れを、自分が創作したキャラクターから貰ったものだという設定にした」というものでしょうか。でもそれで全然いいんです。それだけで彼女は独りじゃなくなる。

 

『SSSS.GRIDMAN』は一見「友達は大事」だというメッセージなようで、実はその逆で「友達がいなくても、君は独りじゃない」と言っているんじゃないでしょうか。

単純に友達の大切さがテーマだった1993年の『電光超人グリッドマン』を引用しつつ、2018年に合ったテーマに作り変えた『SSSS.GRIDMAN』 。

素晴らしい作品だったと思います。

 

 

余談1

SSSS.GRIDMAN 第4話小ネタ解説 - ニコニコ動画がとてもよく出来ているのでおすすめ。4話~11話まであります。たぶん最終話も上がるはず。

 

余談2

裕太がグリッドマンに選ばれたのは、本来アカネのことを好きになる設定だったのにバグって六花のことを好きになったから、なわけです。

で、現実世界のアカネはコンピューターワールドのアカネと違って、立花みたいに長い髪の毛です。六花はアカネの最高の友達として設定されているから、きっとアカネ自身のこともたくさん投影されているでしょう。

裕太が立花に惹かれた理由(バグが起こった理由)が、六花の中にある現実世界のアカネ成分だとしたら、エモいなぁ。そうだとすると、あの世界で唯一裕太だけは現実世界のアカネを肯定してることになるわけで。

 

余談3

9話「夢・想」は本当に素晴らしい出来でした。
1話単位で見たら『SHIROBAKO』の23話以来です。
アカネが可愛すぎて、歯を食いしばって耐えないと発狂しそうでした。
お墓のシーンの空の青がとても印象的です。
監督は五十嵐海さん。名前覚えとこ。湯浅政明っぽくて好きな作画。

 

余談4

TRIGGERの次回作は映画『プロメア』。
グレンラガンキルラキルの監督今石洋之×脚本中島かずきだから期待しないわけにはいかない。久しぶりに映画館行こうかな。