100点満点でいえば、200点ぐらいの面白さだったんだけど、人を選ぶ話。
主人公である冷めた男子高校生が、自分の生まれなかった世界に飛ばされる。
その世界では自分の代わりに生まれてこなかった姉がいた。
自分の世界では離婚一歩手前だった両親が仲良くしている。
死んだはずの兄が生きている。
救ったと思った恋人が、別の誰かに救われていた…。
2時間ちょっとで読めたので、まだ読んでなかったら是非とも読んで欲しい…。
以下ネタバレ
わかりにくいという感想が結構あったけど、すごくわかりやすい話だと思う。
人に依存する生き方しかできないノゾミが、自分で道を切り開けるはずなのにそれをしないリョウを妬んで、それを思い知らせるために平行世界に飛ばした。
最後の電話はサキがリョウを肯定するためにツユを騙った。
でもわからないのが川守(妥当に考えて、三途の川の渡し人を暗示しているんだろう)が言う
「一人だと誘われちゃうよ。二人でないとダメなんだ」ってところ。
サキとずっと一緒にいるべきだったというのだろうか。
リョウの想像した、サキを妬ましく思うか、依存するかのどちらかという結果はいかにもありそうだけど。
それとも、サキに限らず常に誰かと一緒にいるべき、ひとりで悩むなよ、という意味だったんだろうか。
明確に「こうすれば良かった」というものがあるわけではないけど、平行世界にいる間でも帰路は幾つかあった。
フミカとの遭遇や、すべてをサキの言うとおりにしていたこと。
なかでも一番ひっかかるのは兄との会話。
あれによってリョウは更なる自己嫌悪になるわけだけど、あそこで兄を見下したりせずに頼るのが正解だった…と考えるのは楽観しすぎだろうか。
「推理」という言葉は一度も出てこないが、作者はこの本を
「長編で、青春小説で、ミステリです。」と言っている。
http://www.pandreamium.net/info/02.html#04
んで、そのあとには「何がボトルネックなのでしょうか。」
作者がミステリと言ったのは、フミカの計画なのもあるだろうけど、やっぱり本筋は何がボトルネックなのかのフーダニット。
そして別のところではこう言っている。
http://www.pandreamium.net/bookinfo/08bottleneck.html
「ボトルネックがあります。排除すれば済むと人は言いますが、むしろ問題なのはここからです。」
『カイジ』でもそうだけど、絶望につぐ絶望を見せられると、希望を見出したくなるんだよね。
『けいおん』見てて、ドロドロした裏の人間関係を疑ってしまうように。
作者は読者に問いかけてる。
これだけの辛い真実を突きつけられても、リョウが絶望しながらも生きていく姿を想像できますか、と。
ミステリにおける、読者への挑戦です。
作者のブログを漁ってたらこんなのがあった。
Q4.『遠まわりする雛』で天文部が遊んでいたのは「トラベラー」ですか
いいえ、「シャドウラン」です。
突入しようとしているのはレンラクアークです。
……と思いましたが、それではスペースファンタジーにはなりませんね。では「メックウォリアー」で。
すいません、「トラベラー」は遊んだことがないのです。
TRPGだとはわかったけど、そこまで好きだと嬉しいなぁ。
ミステリといえば、『それでも町は廻っている』を読みました。
あれはもう完全にミステリですね。
ミステリであり日常系ほのぼのでありSFでありどたばたコメディでありタイムトラベルものでもある…。
ストライクゾーンど真ん中でした。
もーちょっと上手いこと宣伝してくれればもっと早く読んでたのに…。