山奥ニートの日記

ニートを集めて山奥に住んでます。

別居婚を解消しました

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結婚したのが3年前。

遠距離恋愛で付き合っていた期間も含めると、かなり長い間、妻は名古屋で会社員、僕は和歌山の山奥でニートをしているという、いわゆる別居婚が続いていた。

ちなみにこの「名古屋」というのは、厳密に言うと「名古屋圏」のことです。

別居婚というと、なんだか仲が悪いように思われそうなので、説明が面倒くさいときは「僕が和歌山で単身赴任でニートしている」なんて言うこともある。

僕は山奥の暮らしがとても楽しかったし、妻は自分の専門である仕事に就くことができている。

僕ら2人とって、結婚しても別々に住むというのは当たり前のことでした。結婚自体も、特に結婚への障害がないし、税金とか安くなるんならしとくか、というふんわりしたものだった。

僕は基本的にヒマなので、たまに妻のところに行っては、遅く帰宅する妻のご飯を用意します。洗濯や掃除に手を出すとダメ出しの嵐なので、料理だけ。なので専業主夫とはちょっと言いづらい。妻の家にいる間は、ヒモに毛が生えたような存在だ。

そういうわけで僕は、地方都市である名古屋と、和歌山の山奥の二拠点生活をしていました。

山奥ニート本も、多くの部分を気軽に図書館に行ける名古屋にいる間に書いていたし、元々田舎より都会のほうが好きなので、良い気分転換になる。

都会は歩くだけで、様々な情報が飛び込んでくるし、たくさんの人間の創意工夫に感心する。でもこれは山奥の住人たちの中では異端で、みんなは広告の多さと騒音にうんざりするみたい。

僕にとって、2拠点生活の最も良いところは、移動するたびに自分の生活をリセットできる点だった。

毎回、移動する日が近づくと、身辺整理を始める。

山奥を離れるときには、川で水遊びは十分楽しんだか、BBQはしたか、雨上がりの早朝の雲海に浮かぶ黒い山を見たか。

都会を離れるときには、散歩途中で缶チューハイを買ったか、マックや丸亀製麺には行ったか、妻と十分時間を過ごしたか。

「いつでもできる」と思うと、案外やらないもんです。逆にもうすぐここからいなくなるんだとわかると、なんでもないものも大事に思えるようになる。

そうして、山奥から都会に行くなら、山奥の僕は死に、都会の僕として生まれ変わる。都会を去り山奥へ戻るときは、その逆になる。

交通手段は鈍行電車をよく使う。

高速バスのほうがほんの少し安いけれど、何度か乗り過ごしたことがある。それに、南紀へ向かう電車はいつだって空いていて、車窓から緑を眺めながら、静かに酒を飲むのだ。

乗り物に乗っている間は、そこに座っているだけで「移動している」ことになる。

自分が何もしていなくても、何かしていることになる。

ぼーっとしていても、罪悪感を覚えるスキマがない。

だから旅が好きだ。

けれど、完全に脱力していいわけじゃない。

名古屋から山奥へ帰るときは、脳の一部を覚醒させておかなくちゃ。

14時50分に紀伊田辺駅に着いていなければ、共生舎行きのバスに間に合わなくなる。

これは、朝8時に出発しても、電車1本逃したら自力で帰れなくなることを意味する。

ちょうどよく、うちの住人が町に降りていればピックアップしてもらえるけど、僕は携帯電話を持っていないので、それもなかなか難しい。

電車の遅延は致命傷。そのせいで、駅前のゲストハウスに泊まったことが何度かある。

何年も同じ路線に乗っているから、すっかり新鮮味がなくなってしまった。ワクワクする旅ではなく、ルーチンになる。残るのは疲れだけ。

交通費だって馬鹿にならない。

でもこの2拠点生活で一番嫌だったのは、名残惜しそうに僕を見送る妻の顔を見ることだった。

  ***

そうして「そろそろなんとかしたい」と2人が思い始めた折に、新型コロナがやってきた。

名古屋でも時短営業。外に出るにはマスクが必須。山を降りても知人にすら会えない。

多くの会社がリモートワークを始めた。

ならもう都会の意味ないじゃん。ってことで、妻も最先端の仲間入り。

妻の会社も、リモートワークにOKを出した。

今の会社に籍を置いたまま、今年9月からこの山奥に住むことになった。

僕と妻が出会ったのは、妻がこの近くで猟師の見習いをしていたとき。猟師見習いを辞めたあと、短い間だけど共生舎に住んでいたこともある。

山奥での暮らしは抵抗がないどころか、念願といってもいい。

僕の部屋は他より多少広い場所を使わせてもらっているので、なんとか2人暮らせる。

日中は妻は別の部屋でお仕事。僕はその間、今までどおりの山奥ニート

妻と一緒に、山奥の季節を感じられるのが嬉しい。

新型コロナを利用してやれた。ざまあみろ。やられっぱなしじゃないからな。

妊娠中のももこさんがワクチンが打てないこともあって、しばらく鎖国は続けるだろう。

夫婦が2組いることを他の住人たちはどう思ってるんだろう。

僕と妻にとっては、ももこさん夫妻の子供が生まれることは、将来自分たちが子育てするにあたって、格好のモデルケースだ。なるべく手伝わせてもらって、経験を積みたい。

予定日は12月。

一体これからどうなるんだろう。

今はとっても平和で、おだやかな毎日だ。

でも間もなく別世界からやってくる、カオスの化身を、僕は楽しみにしている。

 

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